街の想い出(3) 新宿その1 ヴァージンメガストア新宿店
「新宿」と聞いてまず思い浮かべるのはヴァージンメガストア新宿店(2004年閉店)。新宿に行った時は、だいたいこのヴァージンメガストア新宿店と紀伊國屋書店本店には寄るようにしていました。
ヴァージンメガストア新宿店の特徴は、アジア系ポップミュージックのコーナーが飛び抜けて傑出していたこと。
私が東京に通い始めた1994年当時、フジテレビ系の深夜枠(関東&北海道ローカル)に「アジアン・ビート」という音楽紹介番組がありました。司会をしていたのは、まだ全く売れていなかったユースケ・サンタマリアと、文恵子さんという韓国系の女性(文さんについては本職は何なのかよく知りません)。中国、香港、台湾、韓国、インドネシア、タイなどのポップスを中心に、ミュージッククリップなども流していました。
90年代半ばの日本の音楽シーンはバブル経済の崩壊を受けて、内省的な歌詞を持ったものが支持されていましたが、アジア諸国は経済が昇り調子だったということもあり、より広い視野を持った力強い歌詞を持つ歌や、あるいは日本ではイケイケの時代を経て失われつつあった奥手のラブソングなど、新しくないだけに却って新鮮な曲が溢れていました。
その後、フェイ・ウォン、艾敬、崔健などは日本のレーベルと契約し、彼らのCDは少し大きめのCDショップでなら手に入るようになった(今はまた入手困難になってしまいましたが)ものの、そうしたメジャーレーベルから注目を浴びていないアジアンアーチストを探すのも、ヴァージンメガストア新宿店に通う楽しみでした。
私がCDを買ったアジアのアーチストの中で特に記憶に残っているグループがあります。
韓国の男性ヒップホップデュオ“deux(デュース)”です。
デュース(フランス語の2を意味するdeux。これをあえて英語読みにして「デュース」とネーミングした)は、キャッチーなラブソングなども歌っていた男性デュオで、メンバーの一人、キム・ソンジェは日本滞在経験があり(代々木上原に住んでいたそうです)、「アジアン・ビート」に出演した際も、日本人と変わらないほど達者な日本語を披露していました。
デュースは1995年に解散するのですが、その直後、ヴァージンメガストア新宿店のアジアンポップスコーナーを訪れた私は、衝撃的な文字を目にします。キム・ソンジェの急死を知らせるものでした。
キム・ソンジェは享年23歳。余りに突然の死に、「薬物では?」という噂も飛びかいましたが、その後更に衝撃的な事実がわかります。キム・ソンジェはストーカーの被害にあっていました。相手は元彼女。別れを告げたものの女は聞き入れなかったそうです。そして、キムの死後、その女性はキムを毒殺したと告白するのです(その後、裁判では証拠不十分で無罪判決を受けます)。
韓流ブームという名で韓国芸能界が注目される約10年前の話です。
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