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2006年12月 9日 (土)

「クライスラー・プレイズ・クライスラー」

フリッツ・クライスラー 「クライスラー・プレイズ・クライスラー」 20世紀最高のヴァイオリニストの一人であり、作曲家としても名高いフリッツ・クライスラー(1875-1962)の自作自演&名作曲家の作品を自ら編曲・演奏した録音を集めたCDを紹介します。
NAXOSから出ている「クライスラー・プレイズ・クライスラー」です。

録音は1936年と38年にロンドンとベルリンで行われています。ピアニストのフランツ・ルップとの共演。
SP録音であり、ノイズも多く、音自体は現在の録音に比べるとたいへん聴きづらいものであり、録音を気にする人には薦めませんが、クライスラーが奏でるヴァイオリンの甘美な音色と小粋な節回しが魅力的です。

クライスラーには自身が作曲した作品を、「図書館などで発見した、バロック期以前のものと思われる作者不詳の作品」として発表、演奏する癖があったため、謎の作曲者を巡って人々の様々な憶測を呼び、ヴィヴァルディを始めとして多くの作曲家の名前が挙がったこともありました。しかし、良く聴くと多くの作品に類似点があることはわかるため、「クライスラー自身の作品では」と疑う人も当然いました。
1935年にはクライスラー自身が、「自作である」とあっさり認めています。

このCDに録音時期は、1936年と1938年なので、クライスラーが真相を明かした直後の記録であり、その点でも貴重です。

「ウィーン奇想曲」(これは最初からクライスラー作曲として世に出た)、「愛の喜び」、「愛の哀しみ」など現在ではクライスラーが書いた名ピースとして知られる作品の数々と、J・S・バッハ、モーツァルト、ブラームス、ショパン、ドヴォルザークの作品をクライスラーが編曲したもの、全19曲を収録。

自作自演に良くあるケースですが、クライスラーの自作の演奏は意外に醒めていて、他のヴァイオリニストの演奏の方が遙かにロマンティックだったりします。が、クライスラーの粋な節回しは独特で、真似るのは難しいと思われるだけに貴重でもあります。

名作曲家の作品の編曲も巧みで、演奏も洒落ており、クライスラーのヴァイオリンを弾く喜びが、聴き手に伝わって聴く喜びを生み出します。
音楽鑑賞の一つ理想を成し遂げた名盤といっても過言ではないと思います。

クライスラー/Kreisler Plays Kreisler: Kreisler(Vn)

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