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2007年3月29日 (木)

異才ファジル・サイの奏でる正統的ではない本物のバッハ

トルコ出身のピアニスト、ファジル・サイのアルバム「シャコンヌ サイ・プレイズ・バッハ」(TELDEC)を紹介します。

ファジル・サイは1970年、アンカラ生まれ。今や数少ない変人系天才ピアニストの生き残りです。

「シャコンヌ サイ・プレイズ・バッハ」 ファジル・サイ直筆サイン入りジャケット ジャケット上のゴールドの文字は、神戸新聞松方ホールでファジル・サイのリサイタルを聴いた際、終演後に行われたサイン会で貰ったサイの直筆サイン。顔のところではなく、下のピアノ部分にサインして貰おうと思ったのですが、サイさんはこちらがその意を伝える前に、さっさと自分の顔写真の上からサインを書き始めてしまいました。

とにかく落ち着きのない人で、ピアノを弾いている最中もあっちをキョロキョロこっちをキョロキョロ、サイン会の間も視点は定まらず、目はあちこちを泳いでいました。

かなり変わった人であるファジル・サイですが、才能は確かで、このJ・S・バッハアルバムでも正統的ではないのに極めて説得力溢れる音楽を作っています。

「フランス組曲」第6番、「イタリア協奏曲」、「プレリュードとフーガ イ短調」(リスト編曲)、「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番より“シャコンヌ”」(ブゾーニ編曲)、「平均率クラヴィーア曲集第1巻」より“プレリュードとフーガ”を収録。

学究的なバッハではなく、インスピレーションを大事にしたバッハですが、音の煌めきや自在感、奔放でありながら雅やかな雰囲気などが実に楽しく、J・S・バッハが生き返って耳にしたら狂喜しそうな快演揃いです。

ブゾーニのピアノ編曲による「シャコンヌ」は、スケールの大きさ、思索の深さに心打たれる演奏であり、ブゾーニの編曲がヴァイオリンを単にピアノに置き換えただけのものとも、バッハの名を借りた異端とも思えなくなります。

正統的ではないのに見事なバッハ演奏を繰り広げてしまうサイの演奏は、公式を無視し、常に独自の理論によって正答を導き出してしまう天才数学者の姿を私に連想させます。

バッハ/French Suite.6 Italian Concerto Chaconne Etc: F.say(P)

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