シベリウスの年に(7) サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団 「シベリウス交響曲全集」
EMIから出ている、サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団の「シベリウス交響曲全集」を紹介します。1980年代半ば、ラトルがまだ30代前半の頃に完成させた全集です。
ラトルというと、斬新な解釈、時には「エキセントリック」とも言われるほどの演奏で有名ですが、このシベリウスではイギリスの指揮者らしく比較的穏健な音楽を作っています。
シベリウスの交響曲は特に後期の作品の演奏が難しいとされていますが、ラトルは普通の指揮者とは異なり、シベリウスの後期の交響曲の方が水準は上です。
前期の交響曲も平均を上回っており、シベリウスの音楽に適性のあることがわかります。
最も出来が良いのは交響曲第7番。「シベリウスの音楽風景には人間がいない」と称される場合がありますが、ラトルの演奏は人間的なドラマに溢れています。ノスタルジアをかき立てるような痛切な心情を聴く者に訴えかけてきます。旋律をクッキリと歌い上げるのも印象的。
交響曲第5番もわかりやすい演奏で、ラストのささやかな凱歌も、地味すぎず派手すぎず、程よく再現させています。
交響曲第4番第2楽章と第3楽章の絶望感、交響曲第6番の地味ながら清楚な美しさなども特筆事項です。
神秘的雰囲気は本場の指揮者に一歩譲るものの、わかりやすさにおいては最右翼の全集。シベリウス入門盤としてもお薦めです。
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