岩城宏之指揮 黛敏郎「舞楽」&「曼荼羅交響曲」
今年が没後10年にあたる黛敏郎(1929-1997)の代表作、バレエ音楽「舞楽」(1962年初演)と、「曼荼羅交響曲」(1960年初演)を収めたCDを紹介します。岩城宏之指揮NHK交響楽団の演奏。「舞楽」が1967年、「曼荼羅交響曲」が1965年の録音です(DENON)。
武満徹と並び、20世紀後半の日本作曲界をリードした黛敏郎。音楽番組「題名のない音楽会」の司会者としてもおなじみでした。
1950年代前半にデビューした黛敏郎は、当時の世界最先端の作曲技法を大胆に取り入れて認められるなど、最初からスター作曲家としてスタート。男前であり、女優の桂木洋子と結婚するなど話題性にも事欠かず、映画界ではその傑出した才能ゆえ「天才」と呼ばれ、「次の映画音楽も『天才』に頼もうや」などと言われていたといいます。
しかし、その後、政治運動などにのめり込むなどして作曲からは次第に距離を置くようになり、また「題名のない音楽会」でも、そのワンマンぶりが怖れられるなど、業界からも声が掛かりづらくなっていったようです。
しかし、このCDに収められた曲はいずれも傑作。ニューヨーク・シティ・バレエ団からの委嘱で書かれた「舞楽」は、雅楽的な要素を最も見事にオーケストラ音楽に取り入れた音楽であり、「曼荼羅交響曲」の東洋的にして神秘的な旋律と音色も聴く者を魅了します。
黛敏郎の最大の理解者の一人であった岩城宏之の指揮は流石に堂に入っており、NHK交響楽団も力強い演奏で岩城の棒に応えています。
素顔は少年のようだったともいう黛敏郎。もっともっと作品が演奏されても良い作曲家の一人です。
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