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2007年6月 1日 (金)

これまでに観た映画より(1) 「息子のまなざし」

DVDで映画「息子のまなざし」を観る。ジャン=ピエール・ダルデンヌとリュック・ダルデンヌの兄弟による監督作品。オリヴィエ・グルメ主演。ベルギー&フランス合作。

ベルギー。職業訓練所で木工を教えるオリヴィエ(オリヴィエ・グルメ。役名は同じだが、オリヴィエ・グルメ本人を演じているわけではない)。かっては家庭を持っていたが、息子が少年の手に掛かって殺されてからは離婚し、今は一人で暮らしている。ある日、オリヴィエの下に前妻のマガリがやってくる。再婚が決まったという知らせ。子供も出来たという。

そんな折り、職業訓練所にフランシスという少年が入所する。オリヴィエの木工クラスに入ってきたこのフランシスこそ、5年前にオリヴィエの息子を殺害した犯人だった。オリヴィエはそのことをマガリに知らせ、二人でかっての悪夢を思い出すのだった…

まがう事なき秀作である。秀作中の秀作と、いくら絶賛してもまだ足りないほどに素晴らしい。

オリヴィエ・グルメの抑えた演技。そしてフランシスを演じるモリガン・マリンヌの孤独を湛えた眼差し。

カメラワークは独特で、ほとんどずっとオリヴィエの顔を撮り続けている。あるいはカメラこそが「息子のまなざし」なのか、とも思ったが、どうやらそうではないようだ。「息子のまなざし」とはオリヴィエの中にある息子のまなざしなのである。息子が生きていて、今、自分を見ていたらどう思うか、という客観的で内面的なまなざし。

オリヴィエもフランシスも無表情で、何を考えているかわからない。だがおそらく本人達も気持ちの整理が上手くつけられず、自分が何をどうしたいのかわからないのだろう。そういった戸惑いが無表情であるが故に──まるで能面のように──雄弁に語られる。

セリフは極端に少ないが、いずれも洗練されていて、「良いセリフ」のお手本のようである。そして、語られない部分が多いが故に、観る者は想像力を駆り立てられるのである。

本当に真摯に誠実に作られた名作であり、是非多くの人に観て貰いたい。

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