シベリウスの年に(9) アンソニー・コリンズ指揮ロンドン交響楽団 「シベリウス交響曲全集」
1950年代に録音された、アンソニー・コリンズ指揮ロンドン交響楽団による「シベリウス交響曲全集」(DECCA)を紹介します。モノラル録音ですが、録音の優秀さで知られたDECCAだけに音は生々しく、録音にこだわる人でなければ不満は感じないと思います。
不満を感じるとしたらむしろ当時のロンドン交響楽団の技術で、管が不安定だったり、全体の音が揃わない場面が多く聴かれます。
シベリウス存命中の録音であり、リリース以来名盤の一つに数えられてきたコリンズ指揮ロンドン響盤ですが、その後リリースされた多くの名盤の陰に隠れる形となって、日本ではCD化が進まず、シベリウス没後50年に当たる今年になってようやく国内盤CDが発売されました。
さて、演奏ですが、ブリザードに巻き込まれたかのような激しい音の風圧を感じさせる交響曲第1番、大仰でない絶望と諦観の音楽世界を再現した交響曲第4番、地味ながらしっとりとした味わいを持つ交響曲第6番などが特に優れた出来。
他の曲も全て一定の水準に達しています。
20世紀半ばまでのシベリウス演奏は、現在に比べるとかなり激しいものが多く、シベリウスの交響曲を情熱的に解釈する指揮者が多かったことが窺われます。アンソニー・コリンズの指揮もまた「荒ぶるシベリウス」で、曲そのものに語らせようとする現代的なシベリウスとは別物ですが、シベリウスがまだ生きていた時代に録音された名盤として、多くの人に聴いて貰いたい全集です。
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