パーヴォ・ヤルヴィ指揮 幻想交響曲
現代を代表する指揮者の一人、パーヴォ・ヤルヴィの指揮したベルリオーズの幻想交響曲のCDを紹介します。パーヴォ・ヤルヴィが音楽監督を務めているシンシナティ交響楽団の演奏ですが、録音そのものはパーヴォがシンシナティ響の音楽監督に就任する以前に行われています。TELARCレーベルからの発売。
世界的な指揮者ネーメ・ヤルヴィの長男として、1962年、当時はソ連に属していたエストニアの首都タリンに生まれたパーヴォ・ヤルヴィは、タリン音楽院に学んだ後、一家と共にアメリカに移住、カーティス音楽院で指揮を学び、その後もレナード・バーンスタインやユージン・オーマンディ、そしてなぜかエンリケ・バティスなどにも師事しています。
バーミンガム市交響楽団の首席客演指揮者だった時代に、バーミンガム市響の音楽監督であったサー・サイモン・ラトルから多大な影響を受け、指揮者としてのスタイルも父親のネーメ・ヤルヴィよりもラトルにより似ています。
パーヴォの持ち味は、オーケストラの各楽器を程よくブレンドさせる品の良さと、指揮能力の高さから生まれるオーケストラを鳴らす術と抜群のコントロール能力、演出の巧さにあります。
幻想交響曲では、シンシナティ交響楽団から輝かしい音を引き出し、洗練されていながら迫力にも欠けないという理想的な演奏を聴かせてくれます。
第5楽章(最終楽章)にクライマックスを設定し、そこまでは徒な盛り上がりを避けて音の艶やかさをより重視するという丹念な設計に、指揮者としての抜群のセンスを感じます。
ベルリオーズはフランスの作曲家、シンシナティ交響楽団はアメリカのオーケストラですが、フランス的でもアメリカ的でもなく、幻想交響曲という曲の普遍性を追求した演奏として、高く評価したいCDです。
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