映像化は不可能といわれた傑作サスペンス 小説『ハサミ男』
1999年、第13回メフィスト賞を受賞した『ハサミ男』。1964年生まれで、マスコミには登場せず、本名も非公開という覆面作家、殊能将之(しゅのう・まさゆき)のデビュー作です。
1998年の後半に書かれたという本作ですが、舞台になっているのは2003年の東京。
ハサミ男こと「わたし」の一人称による記述と、三人称を用いた、連続少女殺害事件を追う刑事達の活躍を描いた部分から成る小説であり、小説という表現形態の可能性を追求したトリッキーな結末が待っています。
独特の表現スタイル故に映像化は不可能といわれた『ハサミ男』ですが、2004年に池田敏春監督によって映画化され、2005年2月に公開されています。
私(本保)は、まず映画『ハサミ男』を観てから小説を読んだので、小説を読み進めている時点で仕掛けも結末もわかっていたのですが、読んでいる間、小説のディテールの丁寧な仕上げに感心しっぱなしでした。わかって読んでいると、「確かにそうだ。そう考えた方が自然だ」と思う箇所が出てくるのですが、予備知識なしで読んだら、そうした箇所も気にかけずに読み飛ばしてしまっていたでしょう。読者の盲点を突く巧みさが光るサスペンスです。
| 固定リンク | 0
コメント