怖くて切ないサイコサスペンス 映画『ハサミ男』
映像化は不可能と言われた、殊能将之の小説『ハサミ男』に池田敏春監督が挑み、見事、映像化に成功した、映画『ハサミ男』のDVDを紹介します。2004年制作、2005年2月劇場公開。
主演:豊川悦司、麻生久美子。出演は他に、阿部寛、斎藤歩、樋口浩二、阪田瑞穂、石丸謙二郎、小野みゆき、広岡由里子、柄本祐、寺田農ほか。
埼玉と東京都江戸川区で女子高生が絞殺され、首にハサミを突き刺された格好で遺体が発見される。マスコミは犯人を「ハサミ男」と名付け、センセーショナルに取り上げた。
そんな中、東京都目黒区鷹番で第3の事件が起こる。しかし、それが「ハサミ男」の犯行ではないと気付いた男(豊川悦司)と女(麻生久美子)は第3の事件の真犯人を探る…
池田敏春監督が原作を読んでから映画を完成させるまで5年を費やしたというだけあって、非常に緻密な仕上がりの映画になっています。映画が始まってしばらくの間は、頭に引っかかるところがいくつも出てきますが、その理由について一つ一つ考えながら映画を観ると、より楽しめると思います。
また出来れば繰り返し観て下さい。同じセリフと仕草が、最初に観たときとは別の意味を持って伝わって来て、構築の見事さに気付くはずです。
殊能将之の原作では希薄だった人間ドラマにも重点が置かれており、人間の怖さと同時に切なさも追求されていて、池田監督の力に舌を巻きます。
豊川悦司のギラギラとした妖しさが魅力的。
また、この映画で女優魂を感じさせる演技を見せる麻生久美子は、同時に非常にエロティック、それも陰性のエロティシズムを発揮しており、女優としての能力の高さに魅せられます。
音楽担当は、映画『マルサの女』や、『ニュースステーション』のテーマ音楽の作曲で知られる、作曲家兼サキソフォン奏者の本多俊之。この映画では、池田監督の要望により、ラッシュフィルムを観ながら即興でサキソフォンを吹いて音楽を付けていくという、ルイ・マル監督が『死刑台のエレベーター』でマイルス・デイヴィスを起用して行ったのと同じ手法が採られており、即興的な味わいのある奥深いサキソフォン演奏を楽しむことが出来ます。
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