シベリウスの年に(12) パーヴォ・ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団 「シベリウス交響曲全集」
パーヴォ・ベルグルンドが挑んだ3度目の「シベリウス交響曲全集」。
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した2度目の全集は、「決定的名盤」との評価を受けていましたが、ベルグルンドが3度目の「シベリウス交響曲全集」の録音に踏み切ったのは、ヨーロッパ室内管弦楽団の技術の優秀さに感心したためといわれています。
その名もずばりフィンランディアというフィンランドを代表するレーベルへの録音。
ヘルシンキ・フィルとの「シベリウス交響曲全集」が北欧情緒やフィンランドと聞いて人々が思い浮かべるイメージに最も近いものだとすると、ヨーロッパ室内管弦楽団との全集はより普遍的なシベリウス像を描き出しているといえます。
室内編成のオーケストラの良さを生かし、旋律美や楽曲構造を浮かび上がらせるなど、従来のステレオタイプなシベリウス像から一歩踏み出した名盤です。ヨーロッパの外れ、フィンランドのローカルな作曲家としてのシベリウスではなく、全世界を代表する偉大なる交響曲作曲家としてシベリウス像確立に挑んだともいえる全集。それが成功したかどうかの評価は後生に譲るとして、シベリウスの交響曲を語る上で欠かすことの出来ない全集であることは間違いありません。
全曲とも優れた演奏ですが、地味ながらも聴き応えのある交響曲第2番、精霊達の踊る様が見えるような交響曲第3番、祝祭的ムードを大仰になることなく演奏した交響曲第5番、旋律美の強調が印象的な交響曲第6番、リアルな響きと神秘的雰囲気が同居する交響曲第7番などは、いずれも同曲録音のトップを争う出来です。
シベリウス/Comp.symphonies: Berglund / Coe
Sibelius: Symphonies 1-7 / Berglund, Chamber Orchestra of Europe
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