シベリウスの年に(17) ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団来日公演1982ライブ盤 渡邉暁雄指揮 シベリウス交響曲第1番&「悲しきワルツ」
交響曲第4番&第7番同様、1982年1月28日に福岡サンパレスでライブ収録された、渡邉暁雄(わたなべ・あけお)指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団のシベリウス、交響曲第1番と「悲しきワルツ」のCDを紹介します。FM東京の録音、TDKの発売。
日本人とフィンランド人のハーフだけあって、生前は容姿の格好良さでも人気のあった渡邉暁雄。
弟子である岩城宏之も、東京芸術大学の打楽器専攻の学生だった時代に、アメリカ留学を終えて芸大の指揮科の先生となった長身痩躯の渡邉暁雄の格好良さに憧れて、渡邉のレッスンに通うようになったと著書『棒ふりのカフェテラス』に書いています(ちなみに岩城たち芸大の学生は、渡邉暁雄のことを仲間内では「アケチャン」と呼んでいたそうです)。
指揮者の容姿と出てくる音楽とは意外に共通性があるのですが、渡邉も例外ではなく、タイトな音によるダンディーなシベリウスを演奏します。
交響曲第1番は、余計な表現を避け、むしろ程よい抑制を持った誠実な演奏。
レナード・バーンスタインとウィーン・フィルの演奏に代表されるような表現主義的なシベリウス交響曲第1番の対極を歩む演奏ですが、渡邉の方がシベリウスならではの味わいを生かしています。地味とも言えますが、その慎ましさがシベリウスの本質のより近いように思われます。
「悲しきワルツ」は、最近の演奏、例えばパーヴォ・ヤルヴィがドイツ・カンマーフィルとの来日公演で聴かせたようなスリムで哀切な演奏に比べると、ふくよかで悲劇性の表出も抑えめですが、1980年代のシベリウス演奏の典型を示しているとも言え、貴重な録音です。
特典として、渡邉とヘルシンキ・フィルによる、シベリウス交響曲第4番のリハーサルの模様と、渡邉へのインタビューが収められています。リハーサルは収録時間が短いのが残念ですが、渡邉の話すフィンランド語を聴くことが出来ます。
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