観劇感想精選(18) 兵庫県立ピッコロ劇団 「KANADEHON 忠臣蔵」
2006年1月30日 兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター中ホールにて観劇
西宮に行く。阪急西宮北口駅南口という紛らわしい場所にある兵庫県立芸術文化センター中ホールで上演されるピッコロ劇団の公演、「KANADEHON 忠臣蔵」を観るためである。
兵庫県立芸術文化センター中ホールに入ると、演出の加納幸和氏がロビーに立っているのが目に入る。演出だけならともかく、加納さんは出演もするのである。しばらくすると脚本の石川耕士氏もやって来て二人で談笑を始めた。「余裕あるなあ」と感心する。
午後7時、「KANADEHON 忠臣蔵」開演。脚本は市川猿之助一門の歌舞伎台本の補筆や脚色などを担当した石川耕士。演出は花組芝居の加納幸和。主役の大星由良之助を演じるのは渡辺徹。渡辺徹というと「太ったおじさん」というイメージしか持っていない人もいるかも知れないが、彼は文学座に籍を置く、れっきとした新劇俳優である。おかると勘平の勘平を演じるのは花組芝居の各務立基。その他の役はピッコロ劇団のメンバーが演じる。
石川耕士のテキストレジによる全段上演である。「仮名手本忠臣蔵」は全段を上演すると12時間以上かかるのだが、それを2時間30分にまとめている。ただ石川は元のセリフになるべく忠実になるよう気を配っている。
面白いことが起きる。役者の発音が明瞭なのに何と発音しているのかわからないという現象がたびたび起こったのである。何故かというと、江戸時代には日常語であったが今では滅多に使われない言い回しや単語がどんどん出てくるのだが、こちらの頭の中にそれに適応する単語がないか、奥に引っ込んでいるためである。数秒のタイムラグを経てやっと頭の中で言葉がリンクして、「ああ、こう言っていたのか」とわかることも多かった。
登場人物は、舞台に出てくると同時に、自分が誰で何をしに出て来たのか語ることが多いため、非常にわかりやすい。しかも観ているこちらもそれが嫌ではないのである。「これはそういう決まり事だから」と、些末なことにはとらわれないのである。
そう、私は、いや私に限らず観客は舞台上に現実の続きを求めてはいない。だから不自然さや、作り物めいていることなど気にしないのである。
ということは、現代の劇作法にも絶対などあり得ないということである。
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