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2007年10月14日 (日)

これまでに観た映画より(12) 「小説家を見つけたら」

DVDで映画「小説家を見つけたら」を観る。監督は、「グッド・ウィル・ハンティング」のガス・ヴァン・サント。主演はショーン・コネリー、ロブ・ブラウン。

ニューヨーク・ブロンクス。ジャマール(ロブ・ブラウン)がいつもバスケットボールを楽しむ広場の近くのマンション最上階の部屋から何者かがこちらをのぞいている気配がする。「ウィンドー」、それがジャマールらがつけた部屋の男の名前だ。ウィンドーについて「人を殺した」、「実は幽霊だ」。色々な噂が広まる。

ジャマールがある日、ウィンドーの部屋に忍び込む。ウィンドーの正体を知る鍵を盗もうというのだが、突然現れた男に驚いたジャマールは盗むどころが自分のバックパックを部屋に置き忘れてしまう。後日、ジャマールがウィンドーに部屋の下の道を歩いているとバックパックが投げ返される。バックパックの中にあった、ジャマールが書き留めた文章には添削がしてある。実はウィンドーの正体は50年前に文学史に残る小説を一作だけ発表して、その後姿をくらませてしまっていたウィリアム・フォレスター(ショーン・コネリー)だとわかる。

「グッド・ウィル・ハンティング」に少し似たところもある、青年の成長を描いた教養映画。「グッド・ウィル・ハンティング」では数学の天才だったが、今回は文章の天才だ。類い希な文才を持つジャマールが、頑固じじいのフォレスターの指導により、文章力だけでなく人間としても成長していくのがわかる。そしてジャマールだけではなく、フォレスターもまた人間としての成長を遂げるのだった。

胸を振るわせる感動ではなく、そっと心を温めてくれるような安心感を与えてくれるのが、ガス・ヴァン・サント監督らしい。

ショーン・コネリーもロブ・ブラウンも好演だが、一番印象に残ったのは敵役であるクロフォード教授を演じた、F・マリー・エイブラハム。「アマデウス」のサリエリ役でおなじみの俳優である。挫折を経てひねくれてしまった男を丁寧に演じ、浮いたところのない悪役像を作り出してみせる。本当に上手いと思う。

「ピアノ・レッスン」の演技で11歳にしてアカデミー助演女優賞を受賞したアンナ・パキンも愛らしい演技を見せており、順調に成長しているようだ。

クライマックスのシーンにもっと説得力があると良かったのだが、あるいは日本語字幕スーパーでは駄目でも、英語の原文そのものは素晴らしかったのかも知れない。いずれにせよ、ドラマがかっているのが少し鼻についた。

とはいえ、「グッド・ウィル・ハンティング」には及ばないにしても、なかなかの佳篇であることは確かだ。「グッド・ウィル・ハンティング」に主演し、脚本も手掛けたマット・デイモンがちょい役で出ているのも嬉しい。

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