巨大なる音の構築物 朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団 ブルックナー交響曲第3番「ワーグナー」
朝比奈隆と大阪フィルハーモニー交響楽団がキャニオン・クラシックスに録音した、ブルックナーの交響曲第3番「ワーグナー」のCDを紹介します。
半世紀以上に渡って大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)のシェフの座に君臨し、ブルックナー演奏の第一人者ともいわれた朝比奈隆。朝比奈と大フィルは何度も繰り返し繰り返しブルックナーの交響曲を演奏してきました。そんな朝比奈も最晩年になると、交響曲第5番や、交響曲第7番、第8番、第9番の後期三大交響曲などに集中するようになります。ブルックナーの初期交響曲は演奏が難しいそうで、朝比奈はステージで取り上げるのが大変だとして、この交響曲第3番「ワーグナー」はライブ録音を好む朝比奈としては珍しく大阪フィルハーモニー会館でスタジオ録音されました。
ブルックナーの初期交響曲は、後期の大作とは趣を異にする、ブルックナーとしては小さな規模で書かれています(あくまでブルックナーとしてはですが)。よって、比較的タイトな演奏を繰り広げる指揮者が多いのですが、朝比奈は交響曲第3番「ワーグナー」に後期交響曲に対するのと同じスタイルで臨み、音による巨大な構築物を築き上げています。
作品そのもののスケールを上回る演奏を行うと、それこそ大風呂敷を広げた感じに陥りやすいのですが、朝比奈のブルックナーに対する解釈の深さ故か、中抜けや緩みを感じさせることにない引き締まった巨大なブルックナーとなっています。
大阪フィルも健闘で、特に弦の音色が美しく、録音の優秀さもあって日本のオーケストラによるブルックナー演奏としては第一級の仕上がりになっています。
さて、「ワーグナー」というタイトルは妙ですが、これについては私自身が「猫町通り通信」というWeb上の日記で触れているので、それを引用します。
「猫町通り通信」2005年7月13日号より
ブルックナーはワーグナーの熱狂的な信者(「ワグネリアン」という)の一人であり、この曲はワーグナーに献呈されたためにこういうタイトルがついた。
しかし同じことを現代の日本でやったらどうなるのかな。交響曲第1番「伊福部」とか交響曲第2番「吉松」とか交響曲第3番「池辺」とか。わけわからんなあ。例に挙げた人はまだ珍しい名字だからいいけれど、例えば林光が好きだったら交響曲第4番「林」になるのか。名字なのか本当に木の林なのか区別できない。かといってフルネームで交響曲第4番「林光」にしたらドラッグストア・マツモトキヨシみたいである。
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