コンサートの記(4) ネーメ・ヤルヴィ指揮 京都市交響楽団第490回定期演奏会
2006年7月4日 京都市交響楽団第490回定期演奏会
京都コンサートホールで、京都市交響楽団の定期演奏会を聴く。指揮台に立つのは、エストニアが生んだ世界的指揮者、ネーメ・ヤルヴィ。350点以上のCDをリリースしている音盤の巨匠として知られ、また、世界が注目する新鋭指揮者、パーヴォ・ヤルヴィの父親でもある。
曲目は前半が、グリーグの「叙情的組曲」と「4つのノルウェー舞曲」。後半がチャイコフスキーの交響曲第4番。
「叙情組曲」は京響の管楽器群がやや不安定であり、弦の音色にももっと彩りが欲しくなるがハーモニーは美しく、音に勢いがある。ネーメは時折、極端に長いパウゼ(休符)を取る。京都コンサートホールは天井が高いので休符の間も上方に音が漂っているのがわかる。ネーメはその残響を楽しんでいるようだ。
「4つのノルウェー舞曲」では、ネーメは肩や肘のちょっとした動きだけで音楽を作ってみせる。造形のしっかりした音楽だが、ネーメの指揮はどことなくユーモラスだ。というよりその動き、わざとやってるだろう。音の動きは緩急自在であり、色々な意味で面白い音楽になっている。
いつもより一段とパワフルな京響の音楽に客席も大いに沸く。
ネーメは何と、「4つのノルウェー舞曲」より第2曲を再度演奏。今度はノンタクトで振ったのだが、滑稽な表情を見せたり、わざと大袈裟に振ったりと、やはり先程もわざとユーモラスに指揮していたことがわかる。
ネーメの実演には10年ほど前にも接しているが、こんな指揮はしていなかった。長くアメリカのオーケストラ(デトロイト交響楽団)の常任を務めたため芸風を変えたのだろうか? 演奏前は難しい表情をしていたのに、なかなか役者である。
メインのチャイコフスキーの交響曲第4番は純音楽的な解釈による硬派な演奏だ。京響の音は輝かしく、スケールは豊かで、ブラスの威力も抜群である。関西のオーケストラ演奏としては間違いなく最上の部類に入るだろう。
演奏終了後、普段は大人しい京都の聴衆が爆発的に盛り上がる。これほど盛り上がっている京響の演奏会を見るのは初めてだ。というより、大植&大阪フィルや、デュトワ&N響の終演後よりも遥かに盛り上がっているじゃないか。凄いぞネーメ。
モーツァルト生誕250周年ということで、特別にアンコール演奏がある。モーツァルトの歌劇「後宮からの誘拐」序曲。ネーメは日本語で、「オメデト、モーツァルト」と言ってから振り始める。
チャイコフスキーと同じメンバーによる演奏なのだが、音も表情も全く違う。きちんとモーツァルトの音がして、モーツァルトの音楽が奏でられる。ネーメはここでもユーモラスな指揮でエンターテイナーぶりを発揮する。面白さとは何かがちゃんとわかっている。
いいぞネーメ! 息子に負けずにまだまだ頑張って欲しい。
| 固定リンク | 0
コメント