コンサートの記(7) 大阪フィルハーモニー交響楽団第386回定期演奏会 大植英次指揮 マーラー交響曲第6番「悲劇的」
2005年3月17日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールにて
大阪・福島のザ・シンフォニーホールで大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴く。指揮は音楽監督の大植英次。演目はマーラーの交響曲第6番「悲劇的」。3月20日には同じ曲で東京公演を打つ。大植と大阪フィルのコンビが東京で演奏会を開くのは初めてである。そのためのドキュメンタリーを作るのか、ABC(朝日放送)のテレビカメラがホール内のあちこちに置かれていた。客席は補助席を追加しても立ち見が出るほどの盛況。
マーラーの交響曲第6番「悲劇的」は演奏時間約80分の大作である。しかも途轍もない大編成であり、フル編成の弦に、ホルンが8人、フルート4人、ピッコロ2人、トランペット4人、トロンボーン4人、ティンパニとハープが2台ずつ、さらにチェレスタ奏者もいて、ステージ上にオーケストラ団員がすし詰め状態になっている。そして楽器(?)としてカウ・ベルやハンマーなどが用いられる。今日の私の目から見ても異様なので、初演時の聴衆は「マーラーは気が触れたのか?」と思ったことだろう。
大植は背の低い指揮者であるが(女性団員ともさほど変わらない)、全身を叩きつけるようにする指揮姿は迫力がある。そんな大植の指揮姿に触発されてか、大フィルも熱の入った演奏を繰り広げる。ただホールのせいか、オケの力か、はたまた私が座った席が良くないのか、直接音があまり飛んで来ず、意外に音が小さく、また芯がない。残響が売りのザ・シンフォニーホールは、あるいはマーラーには不向きなのかも知れない。
大植は、20世紀最高のマーラー指揮者と呼ばれるレナード・バーンスタインの弟子であり、また「大地の歌」のCDも出していることからマーラーは得意なのだろう。第1楽章が特によかった。推進力があり、熱気に溢れている。マーラーはオケの機能をフルに使うようなオーケストレーションを施しており、ピッチカートやコルレーニョ奏法(弦楽器の弦を弓の木の部分で叩いて音を出すこと)を駆使し、コントラバスの木の部分を叩いて音を出すなど当時としては実験的なことをやっている。三味線のような音がすると思ったら、ハープの弦の一番下、つまり床に近い部分を弾いた音だった。
第2楽章の鋭さ、第3楽章の優しい表情などもいい。
最終楽章はオケ団員が体力、精神力ともに疲れたのか、あるいはマーラー独特のあまりにも変化の激しい曲想のせいか、多少雑然としたがそれでも優れた演奏だ。ちなみにハンマーの音は最終稿を採用して2回であった(初演時は3回でこれを採用する指揮者もいる)。
終演後、割れんばかりの拍手。大阪フィル史上に残る演奏となるだろう。前任者の朝比奈隆はドイツもののなかで唯一マーラーが苦手だった。大植とならこれからもマーラーの名演が期待できるはずだ。
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