ワレリー・ゲルギエフ指揮サンクトペテルブルク・マリインスキー歌劇場管弦楽団 「春の祭典」&「法悦の詩」
1953年モスクワ生まれ、ロシア連邦のオセチア共和国に育ったワレリー(ヴァレリー)・ゲルギエフ。現役の指揮者としては最もカリスマ性があり、人気と実力においても現代最高の一人と目されている逸材です。
ゲルギエフは長きに渡ってサンクトペテルブルク・マリインスキー歌劇場管弦楽団(旧キーロフ歌劇場管弦楽団)の芸術総監督を務めており、このコンビがリリースした数多くのCDのほぼ全てが世界各国で絶賛をもって迎えられています。
そんな、ワレリー・ゲルギエフとマリインスキー歌劇場管弦楽団ですが、彼らの最高の一枚を挙げるなら、私はストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」とスクリャービンの交響曲第4番「法悦の詩」を収めたCDを選びます。
初演時のスキャンダルで知られる通り、パリで初演されたバレエ「春の祭典」ですが、題材は原始ロシアのバーバリズム(初演時の騒動はストラヴィンスキーの音楽そのものよりも、生け贄の風習などの題材に原因があるという説もあり、バレエ初演の翌年にやはりパリで行われた、オーケストラのみによる初演の際は好評を博したというのがその根拠とされています)。
そうした「春の祭典」ですので、威力のあることで知られるロシアのオーケストラで聴いてみたいものですが、これまで、ロシアのオーケストラによる「春の祭典」の決定盤とでもいうべきものはなかなか出てきませんでした。そんな中、世界中のクラシックファンが鶴首して待っていた(というと大袈裟でしょうが)ゲルギエフ指揮サンクトペテルブルク・マリインスキー歌劇場管弦楽団による録音が1999年に行われ、リリースされると同時に、全世界で高い評価を得ました。
外見からして野性味に溢れるゲルギエフ(実際は数学の才能にも恵まれたインテリ)ですが、オーケストラからパワーのある響きを引き出す力は世界でも最高レベル。それも他のロシアの指揮者のように低音と高音を強調した押しの強いものではなく、適度に洗練されたパワフルさが魅力です。
「春の祭典」は、各楽器の出す音の密度が濃く、鋭く、力強く、また他の演奏では聞こえない内声部が強調されていたり、逆に多くの演奏で強奏される部分を軽くしたり、内容、個性ともに充実した演奏です。「春の祭典」の録音は数あれど、最高峰に位置するCDであることは間違いないでしょう。
モスクワ生まれのアレクサンドル・スクリャービン(1872-1915)は、神秘思想などに共鳴し、「神秘和音」という独特の和声を生み出した異色の作曲家。西欧の作曲家とは明らかに異なる個性を持った作曲家で、やはりロシアの指揮者とオーケストラで聴いておきたい作曲家ですが、ゲルギエフとマリインスキー歌劇場管弦楽団はそうした期待に十二分に応えています。
ストラヴィンスキー/スクリャービン/Le Sacre Du Printemps / Sym.4: Gergiev / Kirov.o
| 固定リンク | 0
コメント