シュトックハウゼン 「ヘリコプター四重奏曲」
ドイツ現代音楽の大家、カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007)。
電子音楽追求の先駆けとなったのを始め、現代音楽界に多大なる功績を残した人ですが、同時に奇妙な言動も目立った人で、特に晩年は自らのCDレーベルを興し、自作を録音したCDを法外な値段で発売。しかも、CD購入に際してシュトックハウゼンの許可がなければならないという、妙なことまでしていました。
さて、今日、4月15日は、ヘリコプターの日だそうですが、シュトックハウゼンは、ヘリコプターを用いた音楽を書いています。どう用いたのかというと、ヘリコプター4機を用意。1機に一人ずつ弦楽四重奏団のメンバーを乗り込ませ、上空でホバリングしているヘリコプターの中で、ヘッドホンをつけた奏者が演奏。聴衆はコンピューターで調整された音楽をアンプを通して地上で聴く。という、かなり「来ている」代物です。
マンガ「のだめカンタービレ」の世界の住人達がまともに見えるほど、現実の音楽家はぶっ飛んでいます。
さて、「ヘリコプター四重奏曲」はCDになっています。幸いなことにシュトックハウゼンのレーベルからの発売ではないので安値で手に入れることが出来ます。
現代作曲家による弦楽四重奏曲を数多く演奏していることで知られるアルディッティ弦楽四重奏団の演奏を収めるシリーズの1枚として録音されたもので、WDR(西部ドイツ放送)とフランス国立放送が制作に協力しています。
録音は、初演時のヘリコプターのプロペラ音を用いつつ、スタジオで収録されるという、考えられ得る限り、最も常識的な方法で行われました。
さて、「ヘリコプター弦楽四重奏曲」ですが、困ったことにといいますか、面白い曲だったりします。
ヘリコプターのプロペラ音が通奏され、アルディッティ弦楽四重奏団のメンバーが、その羽ばたきの音を模した旋律を奏でていきますが、グリッサンド、ポルタメント、ピッチカートなど、弦楽器のあらゆる奏法を駆使して奏でられる音響が思いのほか格好良く、そして、聴き手が単調だなと思い始めそうなところで、奏者達が、「アイン、ツヴァイ、ドライ」とドイツ語で数を数え始めるのですが、これがまた絶妙のアクセントになっています。数を数えることに何の意味もないのですが、この意味を去勢された行為がアクセントになるという発想がまた格好いいのです。
演奏時間は30分を超えます。普通なら、ヘリコプターが30分以上もホバリングを続けていたら不快に思うはずで、だから騒音公害という問題も起こるのですが、プロペラ音が弦楽四重奏の通奏として用いられた場合は、何故か心地よさすら覚えます。
「何故」という問いかけを聴衆に突きつけてくるという意味で、音楽としてのみならず極めて現代的な作品。
ただ、この曲を「面白い」と思えることが喜ぶべきことなのかどうかは、はっきりいって私にもわかりません。
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