これまでに観た映画より(22) 「バベル」
2007年6月1日 MOVIX京都にて
MOVIX京都で、「バベル」を観る。メキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。出演は、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、菊池凛子、二階堂智、役所広司ほか。音楽は既成のものが使われ、ラストシーンでは坂本龍一の「美貌の青空」(ピアノ&ストリングス・バージョン)が流れる。
モロッコ、アメリカ南部とメキシコ、東京を舞台とした作品。3つの場所での出来事が微妙に関わっている。
モロッコで、少年が遊び半分でライフルを撃つ。その弾がアメリカからの旅行客・スーザン(ケイト・ブランシェット)の首に命中する。
アメリカ南部、アメリカ人の家で乳母をしているメキシコ出身のアメリアは、主である夫妻が外国旅行に出ている間、留守と主夫妻の2人の子供を預かっている。しかしメキシコでアメリアの息子の結婚式がある日、代わりに来るはずだった育児担当者が来られなくなってしまう。やむなく2人の子供とともに国境を越えるアメリア。
東京、耳と口の不自由な女子高生・チエコ(菊池凜子)は孤独の底にいた。
モロッコと、アメリカ南部およびメキシコ編は、砂漠という大自然の前に無力な人間の姿が描き出され、ベルトルッチ監督の「シェルタリング・スカイ」を思い起こさせる。ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットが夫婦を演じるモロッコ編は特にそうだ。
東京では、最先端の都市(少なくとも映画の中では東京は世界最先端の街として登場する)に生き、裕福な家庭に育ち、夜景の素晴らしい高層マンションに住みながら、そうした恩恵から遠い少女の姿が描かれる。
別の人が言えないでいる言葉を別の場面にいる他の人間に語らせるなど、意欲的な演出が光る。
本質的には人間存在の不安定さに重点を置いた重い作品である。
やむにやまれぬ事情が重なったということもあるのだが、やらずもがなのことをしてしまう人間という生物の本質でもある「愚かしさ」に歯がゆさを覚え、同時に人間の弱さに胸を痛める。
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