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2008年5月13日 (火)

グレン・グールド(ピアノ) J・S・バッハ 「ゴルトベルク変奏曲」(1955年盤)

カナダが生んだ天才ピアニスト、グレン・グールド。J・S・バッハのピアノ曲演奏の現代的な洗い直しを始め、天才ならではの独創的な演奏活動を繰り広げました。しかし、数々の奇行でも知られ、協奏曲の演奏の際には、指揮者とオーケストラと聴衆を待たせて30分も椅子の高さ調整を行うなど、神経質な面も目立ちました。
そして1964年に、若くしてコンサート・ドロップアウト宣言を行い、録音のみによる演奏発表を行います。

「拍手こそが我々音楽家の報酬」と語る音楽家もいる中、聴衆の喝采という美酒から遠ざかることの出来た演奏家はグレン・グールドだけであり、極めて異色の存在です。

スタジオで納得のいくまでピアノを弾き、録音を繰り返して完璧なものを目指すという完璧主義的な演奏活動の在り方はいかにもグールドらしいものですが、あるいはグールドは、聴衆を前にしたパフォーマンスというものが、完璧な音楽追求の妨げになると考えたのかも知れません。

グレン・グールドのデビュー録音となったのが、1955年に録音した、J・S・バッハの「ゴルトベルク変奏曲」。

グレン・グールド J・S・バッハ 「ゴルトベルク変奏曲」(1955年盤 NAXOSヒストリカル) コロムビア(CBS)によって録音され、CBSの後身であるソニー・クラシカルからもCDが出ていますが、今日紹介するのは、NAXOSヒストリカルから出た復刻盤。マーク・オバート=ソーンによる復刻です。
「ゴルトベルク変奏曲」の他に、1954年にカナダのCBCによって収録された「パルティータ第5番」も収録。

当時は異例の速さといわれた「アリア」を始め、全曲に渡って比較的速めのテンポを採用し、キッパリとした語り口調で弾き進めていきます。ロマンティックな要素を洗い落とし、バッハの音楽の高潔さを浮かび上がらせた秀演。

「ゴルトベルク変奏曲」で録音デビューしたグレン・グールドは、1981年に「ゴルトベルク変奏曲」を再録音。デジタルで録音された新盤は、「アリア」を遅いテンポで甘く奏でるなど、旧盤との対比が鮮やかでしたが、グールドはその翌年に脳溢血のため死去。デビューと最晩年の録音が「ゴルトベルク変奏曲」であったこともグールドというピアニストの神秘性をより強めることにもなりました。

歴史的録音復刻の名手として知られるマーク・オバート=ソーンの復刻により、モノラル録音ながら煌めくようなピアノの輝きが増しています。

バッハ/Goldberg Variations: Gould(P) (1955) +partita.5

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