アルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団 レスピーギ 「ローマ三部作」
伝説の指揮者、アルトゥーロ・トスカニーニ(1867-1957)。イタリアのパルマに生まれ、最初はオーケストラのチェロ奏者として活躍。病気になった指揮者の代わりに指揮台に立って成功したのを機に指揮者に転向し、20世紀最高の指揮者の一人として後進にも大きな影響を与えました。
極端な近眼であったトスカニーニですが、伊達男でもあった彼は、当時のお洒落とはお世辞にも言えないレンズの厚い眼鏡をかけることを嫌い、スコアを全て頭に叩き込んで暗譜で指揮するようにしていました。これが格好良かったため、その後、多くの指揮者が暗譜で指揮するようになったとも言われています。
癇癪持ちで、「ノー!」を繰り返すため、「トスカノーノ」と呼ばれて怖れられたトスカニーニ。リハーサルでオーケストラを散々に否定することでも有名で、「トスカニーニ?! ノー! ノー!(トスカニーニとのリハーサルは嫌だ)」ということで、ウィーン・フィルの奏者から陰で「トスカノーノー」と呼ばれていたともいいます。しかしその実力は誰もが認めざるを得ず、ミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場(ニューヨーク)、ニューヨーク・フィルと、常に世界第一級のアンサンブルの指揮台に立ち続けました。
そんなトスカニーニの代表盤がNBC交響楽団を指揮した、レスピーギの「ローマ三部作」(「ローマの松」、「ローマの泉」、「ローマの祭り」)。RCAレーベルからの発売。
1936年にニューヨーク・フィルの音楽監督を辞任したトスカニーニですが、ヨーロッパでムッソリーニとヒトラーというファシズムを標榜する二人の独裁者が台頭していたことでアメリカに留まることを決意。一旦は引退も表明しますが、トスカニーニにニューヨークに留まって仕事をして欲しかったNBC放送は、彼のために最上級のアンサンブルを組織しようとし、高額の報酬で最高の奏者を集め、NBC交響楽団を組織しました。
トスカニーニはNBC交響楽団を暴君のような権力を振るって鍛え、世界最高のアンサンブルに仕上げて、数々の名盤を世に残しました。
暴君的エピソードには事欠かず、「独裁者は一体誰なんだ?」と皮肉を言われることも多いトスカニーニですが、妥協を許さない音楽作りが「超」のつく名演の数々を生み出していたことも確かです。
クリアな音であるものの1950年代のモノラル録音ということで、音の拡がりに関しては最新の録音に敵わないトスカニーニ盤ですが、NBC響の「ピンポイント」ともいうべき精密さと威力で次々に繰り出される音は聴く者を圧倒。特に「ローマの祭り」における音の精妙な爆発は異次元の演奏を聴く思いがします。
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