「山田一雄の芸術」 山田一雄指揮京都市交響楽団ほか マーラー交響曲第2番「復活」
「ヤマカズ」の愛称で親しまれた指揮者、山田一雄(1912-1991 山田一雄のほか、山田和雄〈これが本名である〉、山田和男、山田夏精などの名で活躍していた時期もある)の演奏を紹介します。マーラーの交響曲第2番「復活」。1981年5月29日、京都市交響楽団の創立25周年記念特別演奏会でのライヴ録音。京都会館第1ホールでの演奏、収録。
演奏は京都市交響楽団のほか、京都市立芸術大学音楽部合唱団、ベリョースカ合唱団、ソプラノ独唱:中沢桂、アルト独唱:志村年子。
なお、山田一雄は、マーラーの交響曲第2番「復活」の日本初演を指揮した人物でもあります。
同じ日に演奏された、広瀬量平の「管弦楽のための迦陵頻伽(カラヴィンカ)」を併録。ビクターの音源をタワーレコードが「山田一雄の芸術」シリーズとしてCD化したものの一枚。
フルトヴェングラーを尊敬し、情熱的な音楽作りを持ち味とした山田一雄。
フルトヴェングラーは指揮棒のテクニックがなく、日本では「振ると面食らう」という冗談が生まれましたが、山田も棒は下手で、フルトヴェングラーに入れあげていたこともあり、やはり「振ると面食らう」と呼ばれることもありました。
情熱の発露においては他のどの日本人指揮者よりも上で、曲に没頭しすぎて我を忘れた結果、指揮台から転げ落ち、それでも音楽を止めることなく振り続けたり、音楽関係のクイズ番組に出演し、流される音楽が誰の指揮したものか当てるというコーナーで、自分自身が指揮したベートーヴェンの交響曲第5番冒頭の録音を聴いて、何の迷いもなく大声で「フルトヴェングラー!」と即答してしまったなど、愛すべきエピソードにも事欠かない人でした。
京都市交響楽団(京響)を指揮した「復活」でも、情熱の迸りが目に見えるような熱い演奏を繰り広げています。当時の京響は音が今に比べると薄手であり、合奏の精度も万全ではなく、金管の輝きにも不満を覚えますが、それでも山田の情熱的な棒に真剣に食らい付いていて、虚仮威しでない迫力を生み出しており、単に技術が優秀な団体によるマーラーよりもはるかに感動的なマーラー演奏を展開。独唱も合唱も充実しています。
これほどまでに情熱をあらわにした演奏は、現今では珍しく、そうした意味でも貴重な記録といえます。
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