絵本『ヒロシマのピアノ』
実話を元に書かれた絵本『ヒロシマのピアノ』(文研出版)を紹介します。指田和子・文、坪谷令子・絵。
昭和7年(1932)、浜松のヤマハ工場で作られたアップライトピアノ製造番号18209がヒロシマ(広島)、御幸橋に近い家に運ばれてきます。この家に住む、もうすぐ4歳のみさちゃんがこのピアノの主となりました。
ピアノの音に魅せられ、将来は東京の音楽大学に行って、ピアニストになりたいと夢見る、みさちゃん。
しかし、日本は戦争に突入、昭和20年(1945)8月6日、広島への原爆投下により、ピアノも被爆、家のコンクリートの壁に叩きつけられました。
幸い、大破することなく、音もわずかにくるっただけだった被爆ピアノ。みさちゃんもみさちゃんの華族も無事でした。
日本が降伏して戦争は終結。みさちゃんは再び鍵盤に指を触れますが、間もなくして、外から、「せんそうに まけて、日本が これから どうなるか わからんときに、ピアノなんぞ ひくとは いったい なにを かんがえているんじゃ!」と大声がしました。
みさちゃんは以後、ピアノの鍵盤に触れることはありませんでした。それか60年が経ち……。
戦争と原爆の悲惨さと奪われた少女の夢という実話に基づく物語が語られる絵本。矢川光則氏によって音を取り戻した被爆ピアノを演奏して収録されたCD付き。曲は、被爆ピアノのために書かれた「綿のぼうし」(作曲・演奏:山田紗耶香)です。
子供だけでなく、大人にも、そして親子でも読んで貰いたい絵本です。
| 固定リンク | 0
« リッカルド・ムーティ指揮ベルリン・フィル、スウェーデン放送合唱団、スウェーデン室内合唱団ほか モーツァルト 「レクイエム」「アヴェ・ヴェルム・コルプス」 | トップページ | 観劇感想精選(44) 燐光群 「『放埒の人』はなぜ『花嫁の指輪』に改題されたか、あるいはなぜ私は引っ越しのさい沢野ひとしの本を見失ったか。」 »
コメント