広上淳一指揮日本フィルハーモニー交響楽団 レスピーギ「ローマ三部作」
1991年、当時33歳だった広上淳一が日本フィルハーモニー交響楽団を指揮して録音したデビュー盤、レスピーギの「ローマ三部作」(「ローマの噴水」、「ローマの松」、「ローマの祭」)を紹介します。キャニオン・クラシックス。
1984年に第1回キリル・コンドラシン国際指揮者コンクールに優勝し、そのダイナミックな指揮姿と、強烈なエネルギーを放射する音楽作りで世界的な注目を浴びつつあった広上淳一がデビュー録音に選んだのはレスピーギの「ローマ三部作」。音楽史上屈指の華麗なオーケストレーションを誇る曲ですが、それだけに過去の名盤も多い三部作を、それも東京でも上位とは目されていない日本フィルハーモニー交響楽団(日フィル)を指揮して録音するというのはかなりの勇気がいることだと思われますが、そこはさすが広上というべきか、30代前半の指揮者が日本のオーケストラを指揮して録音したとは思えない、華麗な音絵巻を広げていきます。
特に優れているのは、「ローマの噴水」。印象派風とされるこの作品の、光の変化までも音で描いてみせる技術は卓越しています。日フィルの音の美しさも特筆事項。
その日フィルは、低音を支える楽器群がやや弱く、高音が比較的目立ちます。それが「ローマの松」や「ローマの祭」ではオーケストラとしての力の弱さを感じさせる一因になっていますが、それでも1990年代初頭に日本人の若い指揮者と日本のオーケストラがこれだけのレスピーギを演奏していたということを伝える貴重な証言となっていることは間違いないでしょう。
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