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2008年10月31日 (金)

セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 ショスタコーヴィチ交響曲第1番&第9番、バーバー「弦楽のためのアダージョ」

セルジュ・チェリビダッケ(1912-1996)は20世紀に活躍した指揮者の中でも最も異色の活動を行った人です。
ルーマニアに生まれたチェリビダッケは、若くしてベルリン・フィルに認められ、一時はベルリン・フィルの1シーズンをほとんど一人で振るほどでしたが、癇癪持ちで口の悪い彼は次第に楽団員の反感を買うようになり、フルトヴェングラーの後継者争いに敗れて、カラヤンにベルリン・フィルの常任の地位を奪われました。

カラヤンが録音活動を通して全世界に認められていくことに反発したのか、チェリビダッケは、レコード用の録音というものを一切認めず、コンサートの模様を収めた映像作品に関しても「あれは音楽ではなくてスペクタクルショーだ」と言い放ちました。

演奏活動においても、常識外れに長いリハーサル時間を要求し、どんなオーケストラでも自分自身の音色に染め抜くことに専心しました。

チェリビダッケは、通俗的な作品を嫌いましたが、彼が多く仕事をしたのは、通俗的な曲の演奏も多く行う放送局のオーケストラ。これは放送局のオーケストラは資金が潤沢で、リハーサルに多くの時間を割けるという理由も大きかったようです。ということで、レコード用の録音には否定的だったチェリビダッケも、放送用のライブ録音は多く残しています。

そんなチェリビダッケも晩年になると、自分が死んだら放送用の録音の発売を許可することを仄めかすようになり、実際、チェリビダッケの死後、遺族が「海賊盤が多く出ることを懸念する」という理由でメジャーレーベルからのCD発売を許可し、チェリビダッケの正規録音が世に出ることになります。

セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 ショスタコーヴィチ交響曲第1番&第9番、バーバー「弦楽のためのアダージョ」 今日紹介するCDも放送用音源からCD化されたもの。

ショスタコーヴィチの交響曲第1番と第9番、サミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」が収録されています。EMIからの発売。

チェリビダッケの演奏の特徴は、低音をしっかりと築き、その上を磨き抜かれた高音が駆け巡るというもので、重厚な味わいがありますが、音はクリアです。

ショスタコーヴィチの交響曲第1番は、ショスタコーヴィチ17歳時の作品ですが、チェリビダッケのどっしりとしたアプローチゆえか、若い作曲家の作品ではなく、成熟した音楽として聞こえてきます。

ショスタコーヴィチの交響曲第9番は、歪んだユーモアを特徴とする曲ですが、チェリビダッケはしなやかさと迫力を合わせ持つ独特のアプローチを示しています。

バーバーの「弦楽のためのアダージョ」は、ミュンヘン・フィルのストリングスの壮絶なまでに美しくも優しい、慈愛に満ちた音が聴く者の胸を揺さぶります。

ショスタコーヴィチ/Sym.1  9: Celibidache / Munich.po+barber: Adagio

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