穏健派? 誰が? ヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデン ドヴォルザーク交響曲第8番
1927年、アメリカでスウェーデン人の牧師夫妻のもとに生まれ、両親の祖国であるスウェーデンで音楽教育を受けた指揮者、ヘルベルト・ブロムシュテット。NHK交響楽団の名誉指揮者として日本でもおなじみの存在です。
スウェーデン人ということで、北欧ものにも適性を見せるブロムシュテットですが、ドイツ正統派の曲目も得意としています。
ところで、日本人音楽評論家の間では、「ブロムシュテットは穏健派、無個性」という意見が幅を利かせています。N響の定期演奏会などで、情熱的で力強い音楽を聴かせるブロムシュテットなのですが、なぜか実演でのブロムシュテットは考慮に入れられていないようです。
そんなブロムシュテットのデビュー盤、シュターツカペレ・ドレスデンを指揮した、ドヴォルザークの交響曲第8番。1974年の録音。
1548年創設という途轍もなく長い歴史を誇るオーケストラ、シュターツカペレ・ドレスデン。ブロムシュテットは1975年から1985年までシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者を務めていますが、シェフをちょくちょく変える傾向のあるシュターツカペレ・ドレスデンのトップに君臨した指揮者としては10年は長い方です。
ブロムシュテットは、音の美しさで知られるシュターツカペレ・ドレスデンから、単に美しいだけではない熱気と若さに溢れた音楽を引きだしています。デビュー盤からしてブロムシュテットは穏健派でも無個性でもありません。ブロムシュテットとシュターツカペレ・ドレスデンが残した録音を「輸入盤で聴くと」、いずれも美音と情熱と造形美との均衡の取れた優れた音楽を楽しむことが出来ます。
「輸入盤で聴くと」と、条件を入れたのは、実はブロムシュテットとシュターツカペレ・ドレスデンの国内盤CDからは、ブロムシュテットの美質はほとんど聞き取れないからです。
ブロムシュテットとシュターツカペレ・ドレスデンの録音のプロデューサーは実は日本人なのですが、彼は当初はブロムシュテットの名も知らず、シュターツカペレ・ドレスデンの美音を録りたいという理由で録音していました。その結果、ブロムシュテットの美質に全く気付かず、情熱的な部分を排除した単に美しいだけの音が国内盤には入ってしまうこととなりました。聞き比べてみれば違いは歴然。そして、国内盤CDだけを聴いた音楽評論家がブロムシュテットの音楽を「穏健派、無個性」と見なすようになったのだと思われます。
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