コンサートの記(31) 広上淳一指揮京都市交響楽団 特別演奏会「第九コンサート」2008
2008年12月26日 京都コンサートホールにて
日本の年末といえば第九。年末に限らず、第九がこれほど演奏されるのは世界広しといえど日本だけですが、年末というと日本中のオーケストラが必ず第九を演奏します。
戦前、NHK交響楽団の前身である日本交響楽団の指揮者だったローゼンシュトックが、「ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団などでは毎年年末に第九をやっている」と日本に紹介したのが最初とされ、終戦直後に、尾高尚忠指揮日本交響楽団が楽団員の餅代稼ぎも含めて年末に第九を演奏したところ聴衆に大好評だったため、NHK交響楽団では毎年年末に第九を取り上げるようになり、定着したといわれています。
年末の第九はもうとっくにファッションと化してしまっており、それが嫌で、例年は会場まで聴きに行くことはないのですが、今年の京都市交響楽団の第九は広上淳一の指揮ということでコンサートホールまで出かけました。
午後7時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団特別演奏会第九コンサートを聴く。広上淳一指揮。合唱は京都市民合唱団。独唱は、ソプラノ:釜洞祐子、アルト:菅有実子、テノール:市原多朗、バリトン:河野克典。
ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」が当然ながらメインだが、その前にモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」が演奏される。
「アヴェ・ヴェルム・コルプス」は、やはり小編成の合唱で聴くのに適しており、第九用サイズの合唱団ではきめが粗くなるが、全体的な出来としてはまずまずだったのではないだろうか。
メインであるベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」。公演パンフレットに、演奏時間65分と記されており、速めのテンポを採用していることがこの時点でわかった。
広上が引き出す京響の音は極めて明晰。第1楽章の冒頭は敢えてぼかす解釈を取る指揮者もいるが、広上は最初から解析度の高い演奏を展開する。スケールはさほど大きくないが音に活気があり、ハーモニーも美しい。普通の指揮者なら流すであろうところに敢えてギクシャクとした表情を入れてみせるのも個性的である。
第2楽章では、第1楽章とは逆にスケールの大きな音の運動を展開し、第3楽章ではしなやかな歌が印象的であった。
最終楽章では、広上の合唱コントロール力の高さが発揮される。ノンタクトで腕を動かし、手を下から上に押し上げるような独特の仕草で、合唱の音量もまた押し上げる。京都市民合唱団はプロではないし、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」ではそう上手いとも思わなかったのだが、第九では高度な音楽性を発揮。これも広上マジックだろうか。
第九演奏会ということで、普通はアンコールはないはずなのだが、今日は特別に大河ドラマ「篤姫」のテーマ曲が演奏された。
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