ペーター・マーク指揮パドヴァ・ヴェネート管弦楽団 モーツァルト 交響曲第40番&交響曲第41番「ジュピター」
ペーター・マーク(1919-2001)。モーツァルトを得意とした指揮者で、東京都交響楽団の指揮者であり、またNHK交響楽団や読売日本交響楽団とも共演するなど、日本でもお馴染みの指揮者でした。
スイスに生まれ、指揮をエルネスト・アンセルメとヴィルムヘルム・フルトヴェングラーに師事したマークは、若くしてモーツァルト指揮者として認められ、英国の大手レーベルDECCAと契約するなど順風満帆なスタートを切りますが、この人はどうも商業主義に全く合わなかった人だったようで、ある日、音楽関係者と打ち合わせをしている時に、スケジュールで埋まった手帳を見ながら、仕事に追われてばかりいる生活に疑問を持ち、音楽のキャリアを捨てて、ギリシャの修道院で修業、更には香港に渡って寺院で禅に打ち込みます。
その後、禅寺の住職から、「あなたは音楽でコミュニケートすることに秀でているようだから、音楽に戻りなさい」と勧められ、音楽界に復帰。しかし、それ以降は、華々しいキャリアには興味を示さず、自分の好きな場所で好きな音楽に打ち込むようになります。
キャリアを中断させなければ、20世紀屈指のモーツァルト指揮者としてスターになれたのかも知れませんが、それもマークにはどうでもいいことだったようです。
そんなペーター・マークが晩年に、イタリアの廉価レーベルARTSに録音した、モーツァルトの交響曲集。
その中でも傑出しているのは、モーツァルト最後の交響曲となった交響曲第41番「ジュピター」の演奏。
パドヴァ・ヴェネート管弦楽団の技術は必ずしも上級とはいえないかも知れませんが、マークの指揮により、スケールが大きく味の濃い演奏になっています。
音楽性だけを取れば、大手レーベルから出ている名指揮者の演奏に一歩も引けを取らない名演です。
併録の交響曲第40番は、悠然としすぎているところが個人的には不満ですが、モーツァルトのスペシャリスト、マークの老境を伝える記録としては貴重です。
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