観劇感想精選(62) 松竹大歌舞伎 「芦屋道満大内鑑 葛の葉 一幕」「勧進帳」@びわ湖ホール
2008年9月21日 滋賀県大津市・びわ湖ホール中ホールにて
午後5時30分から、びわ湖ホール中ホールで、松竹大歌舞伎、「芦屋道満大内鑑 葛の葉 一幕」「勧進帳」の二本立てを観る。松本幸四郎が弁慶を演じる「勧進帳」が何といっても見物である。
「芦屋道満大内鑑」。芦屋道満は、安倍晴明のライバルであった陰陽師。葛の葉は、安倍晴明の母親とされる狐の名前である。原作は人形浄瑠璃で、芦屋道満と安倍晴明の対決が描かれたもののようだが、歌舞伎では、冒頭の「葛の葉」の場面のみがレパートリーとなっている。
葛の葉姫と狐の葛の葉を早替えにより一人で演じるのが最大の見せ場。早替えを演じたのは中村魁春で、煌びやかに着飾った葛の葉姫が退場して、間もなくして、髪型も着物も変えた葛の葉として現れる。
怪異現象の場も良いし、別れの切なさも良い。葛の葉が別れの歌を障子に書くのも面白い。のちに安倍晴明となる子役も可愛かった。
なお、びわ湖ホール中ホールには、当然ながら花道がないので、下手側に、斜めに走る短い簡易花道を造っての上演であった。
「勧進帳」。松本幸四郎はテレビドラマなどでよく見かけているから気付かなかったが、考えてみれば、幸四郎の歌舞伎を観るのは12年ぶりである。幸四郎が12年もののウィスキーのCMで、「12年前、あなたは何をしていましたか?」というセリフを語っていたが、12年というのも取りようによってはアッという間である。
いわずと知れた「勧進帳」。だが、いわずと知れたというわりには内容の細部まではよく知らなかったりする。幸四郎の弁慶はさすがであったが、私がもし「勧進帳」という作品についてもっともっとよく知っていたら、更に楽しめたし、幸四郎の良さももっとよくわかっただろうに、と思うと口惜しくもなる。そんなことをいっても仕方ないのだけれど。
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