観劇感想精選(67) 「冬物語」
2009年2月20日 大阪・茶屋町のシアター・ドラマシティにて観劇
午後6時30分から、シアター・ドラマシティで「冬物語」を観劇。「冬物語」はシェイクスピアの隠れた人気作ともいうべき悲喜劇である。演出:蜷川幸雄。テキストは例によって松岡和子の新訳を用いる。
出演、唐沢寿明、田中裕子、横田栄司、長谷川博己、藤田弓子、六平直政、嵯川哲朗ほか。
シチリアとボヘミアが舞台である。シチリアはセットの背景も出演者の衣装も赤系統で、ボヘミア人はやはりすべて青系でまとめられている。
シチリア。シチリア王レオンティーズ(唐沢寿明)とボヘミア王ポリクシニーズ(横田栄司)は、子供の頃、実の兄弟のように育った。その後、ポリクシニーズがボヘミアの王となったため久しく会えずにいたが、そのポリクシニーズが久しぶりにシチリアにやってくることに。再会したレオンティーズとポリクシニーズは子供のように遊び戯れる。しかし、シチリア王妃のハーマイニー(田中裕子)のポリクシニーズに対する態度が親しすぎることに疑念を抱くレオンティーズ。レオンティーズは二人が不義密通を重ねているのだという妄想を抱き、ポリクシニーズの暗殺を謀る。レオンティーズの謀略を知ったポリクシニーズはシチリア王の城の裏門から逃亡。しかし、そのことでハーマイニーに対するレオンティーズの疑いは確信へと変わり……
途中休憩15分を加え、上演時間3時間半の大作である。
一番の驚きは田中裕子の若さ。チェーホフの「かもめ」のアルカージナの、あるセリフを思い出してしまった。
唐沢寿明も万全の出来。特に嘆きの声の迫真ぶり、痛切さは野田秀樹の「カノン」でも確認済みだが、日本人俳優の中で随一ではないだろうか。ただ、シェイクスピアの膨大なセリフの量、そして今日が大阪初日ということもあってか、唐沢寿明ほどの俳優でも何度かセリフを噛んだ。それだけシェイクスピアは難しいということだろう。
他の俳優陣も充実。音楽やダンスを効果的に用いた、蜷川のエンターテイメントの精神に溢れた演出も良かった。
紙飛行機が重要な小道具としての役割を果たしており、「冬物語」を許しと和解の物語という解釈で蜷川が捉えていることを的確に表していた。
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