観劇公演パンフレット(35) 「ローズのジレンマ」
黒柳徹子主演海外コメディ・シリーズ第22弾「ローズのジレンマ」の公演パンフレットを紹介します。
表紙担当は和田誠。左から錦織一清(ホリエモンさんじゃありません)、黒柳徹子、草刈正雄、菊池麻衣子です。
作者であるニール・サイモンの簡単な伝記、出演者インタビュー、黒柳徹子と野際陽子の対談などが掲載されています。
「ローズのジレンマ」の感想
2008年11月1日 大阪・茶屋町のシアター・ドラマシティにて観劇
午後5時30分より、シアター・ドラマシティで黒柳徹子主演海外コメディ・シリーズ第22弾「ローズのジレンマ」を観る。作:ニール・サイモン、テキスト日本語訳:丹野郁弓、演出:高橋昌也。黒柳徹子、草刈正雄、菊池麻衣子、錦織一清による4人芝居。
客席に「放浪記」に出演していた斎藤晴彦氏の姿あり。
「ローズのジレンマ」は2003年にオフ・ブロードウェイで初演。日本初演は翌2004年、やはり黒柳徹子主演の海外コメディ・シリーズとして上演された。今回は4年ぶりの再演となる。
「ローズのジレンマ」初演時と同じキャストは黒柳徹子だけで、他の3人は入れ替わり。菊池麻衣子は出産後の初仕事であり、やはり以前に比べると体つきがふっくらしている。
錦織一清も中年だけに年相応の体つき。ポスターやパンフレットの表紙はいつも通り和田誠のイラストだが、そこに描かれた錦織一清はどう考えてもホリエモンにしか見えない。実際の錦織一清の体型はホリエモンよりは痩せていると思うが。
ニューヨーク州ロングアイランドのイースト・ハンプトンにあるローズの夏の家が舞台。
ローズ(黒柳徹子)はピュリツアー賞を2度も受賞した優れた作家だが、5年前に恋人でやはり売れっ子作家だったウォルシュ(草刈正雄)に死なれてからはものが書けずにいる。そのため収入がほとんどないが、かつての成功の日々の浪費癖が抜けず、家計は火の車、借金も日ごとに膨らんでいく。ローズと同居している助手のアイリーン(菊池麻衣子)は何とかして出費を減らそうとしているが上手くいかない。
実はローズは、毎日のように幽霊になったウォルシュと会っている。そのウォルシュが本物の幽霊なのか、ローズの頭が作り出した幻影なのかはわからないが、ローズ以外には見えず、声も聞こえないウォルシュの存在をアイリーンも取り敢えずは認めることにしていた。
いよいよ夏の家も手放さなければならないほどに生活が苦しくなったある日、ウォルシュは60歳の誕生日を迎えるあと2週間後にお別れだとローズに切り出す。そしてウォルシュは自身が完成させることが出来なかった小説の続きを書いて一財産作れとローズに勧める。ウォルシュは若手の作家と組むようローズにいう。ウォルシュが勧めたのはギャビン・クランシー(錦織一清)という作家。ギャビンは本を1冊書いたきりで後は鳴かず飛ばず。今は作家としてではなく、雑誌に記事を書いたり、各種の労働をして何とか稼いでいる男だった。早速、ギャビンに電話をして家に呼び寄せたローズだが、このギャビンというのが礼儀知らずな男で、ローズは一気に不機嫌になってしまい……
アメリカ初演時には不評だったという「ローズのジレンマ」(ニール・サイモンの本でも不評ということがあるのか。恐るべしアメリカ)。不評の原因はおそらく、アイリーンとギャビンの二人の人物造形が浅いことだと思われる。特にギャビンはキャラクター造形自体は良いが、それを見せる場面と舞台に出ている時間も少ないので、ニューヨーカーは不満だったのだろう。ただストーリー自体はきちんとしているし、幽霊の登場などは日本人の感覚の方にむしろ向いているように思われる(日本に伝わる幽霊話は他の国のそれに比べるとやはり美しいと思う。日本人の感覚の繊細さの反映だろう。だから幽霊ものは日本では受けいれられやすいと思う)ので、今回の上演に不満は感じなかった。
いや、不満は感じなかったどころか、良い出来で満足した。黒柳徹子演じるローズのセリフ量が飛び抜けて多いためか、黒柳徹子もセリフを噛んだり言いよどんだりと苦戦するところはあったが、それでもローズというキャラクターにピタリとはまってみせる技量はさすがである。
草刈正雄も渋いし、菊池麻衣子は可憐だし、錦織一清はユニークだし、それぞれの持ち味が発揮されていて、役者陣に不満は一切なしである。
ストーリーも万全とはいえないが、それでも一級とされる日本人作家の本よりも(同じ日本人として悔しいことではあるが)「ローズのジレンマ」の方がずっと上だと認めざるを得ない。
ともかく、こういう芝居に出会えると、演劇好きで良かったと思う。
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