コンサートの記(47) アジアオーケストラウィーク2005 セバスチャン・ラング=レッシング指揮タスマニア交響楽団
2005年10月3日 大阪・福島のザ・シンフォニーホールで
大阪へ。福島のザ・シンフォニーホールで今週は「アジアオーケストラウィーク 2005」が開催される。
今日、公演を行うのはオーストラリア・タスマニア島のオーケストラ、タスマニア交響楽団。オーストラリアは当然アジアではないが、一応、環太平洋ということで特別に選ばれたのだろう。タスマニア交響楽団はピアノの通奏低音入りの「ベートーヴェン交響曲全集」を発表し、賛否両論を巻き起こした。そのことも招聘にもちろん関係しているだろう。
無名オーケストラということで客席は半分ほどしか埋まっていない。オーストラリアやタスマニアに興味がある人、タスマニア響の「ベートーヴェン交響曲全集」を聴いて興味を持った人、そして単なる物好き、が主な客層だと思われる。普段はコンサートに来ないタイプの人もいる。
東南アジア系の人も多いな、と思ったら、彼らの正体は明日演奏するヌサンタラ交響楽団(インドネシア)のメンバーであることが後でわかった。
私が座ったのは3階席のステージ後方よりの席、指揮者が右斜め下に見える席である。シンフォニーホールは京都コンサートホールと違い、ステージ後方寄りでも音のバランスが悪いということはない。
指揮はドイツ人のセバスチャン・ラング=レッシング。見るからにやる気が漲っているタイプの指揮者だった。棒は決してわかりやすくない。勢い余って棒を強く振りすぎ、オケがそれに反応して急に音が大きくなるという場面もあった。
ただ、曲の全体像をあたかも俯瞰するように把握しているのだろう。楽曲の解釈には遺漏がない。
1曲目は、1957年にウズベキスタンに生まれ、オーストラリアで育った、エレナ・カッツ=チャーニンの「ミシック」。現代の音楽だがわかりやすい。悲歌のような弦楽の歌に、管の音が点々と打たれ、最後はかなり盛り上がる。いい曲だと思う。
2曲目はリヒャルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲。オーボエソロはシドニー交響楽団の首席奏者、ダイアナ・ドハティ。明るく澄んだ音を出すオーボエ奏者だ。シンフォニーホールの音響の良さもあって、心地良いが、少し音色が単調な気もする。オーボエとヴィオラの掛け合いが面白い。
メインはベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。ピアノの通奏低音が聴けるか、と思ったがそれはなし。少し残念。指揮者が変わったので当然といえば当然なのだけれど。
タスマニア交響楽団は総勢47名の中編成のオーケストラだが、それを十分に生かし、小回りの利いた快演となった。
アンサンブルは万全。音自体はそう輝かしいものではないが、表情は明るく、音が生き生きしている。
ラング=レッシングの指揮は曲から立体感と奥行きを引き出した優れたものだ。どちらかというとドライなベートーヴェンだが、不必要な重さがないのは却って好感が持てる。
推進力があり、中編成ながら迫力も十分で、聴き応えがあった。
世界には無名でも優れた指揮者とアンサンブルが沢山存在するのだ、と実感する。これが本日の最大の収穫である。
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