コンサートの記(51) 大野和士指揮 京都市交響楽団第526回定期演奏会
2009年7月23日 京都コンサートホールにて
午後7時から京都コンサートホールで京都市交響楽団の第526回定期演奏会を聴く。今日の指揮者は大野和士。日本人指揮者としては一二を争う実力者である。
そんな大野の登場ということもあってか、京都コンサートホールは満員の盛況。キャンセル待ちのお客も多数並んでいた。
曲目は前半がラヴェル作品で、「ラ・ヴァルス」と組曲「マ・メール・ロワ」。後半がショスタコーヴィチの交響曲第5番である。
6時40分から大野和士によるプレトークがある。大野さんは身振り手振りに時折は旋律を歌いながらわかりやすい解説をしてくれる。なお、先日亡くなった若杉弘のために予定されていたプログラムの前に1曲、J・S・バッハの管弦楽組曲より「アリア(G線上のアリア)」が演奏される旨が告げられる。
追悼演奏なので演奏後の拍手は控えるべきだが、プレトークを聴いていなかったのか、それともなりゆきか、拍手をしてしまう人が結構いた。
さて、ラヴェルであるが、大野和士には「音の魔術師」という称号が相応しいのではないかと思われるほどのミラクルな演奏が展開される。まるで音に色がついているのが見えるかのよう。それも原色に近い濃い色でありながらけばけばしさは全くなく、華麗な音絵巻を見るような名演であった。
後半のショスタコーヴィチ、交響曲第5番。弦楽器群が常にヒンヤリとした音を出しているのが印象的。それもただ単に冷えた音ではなく、角氷のようにエッジが立って硬質な音である。
荒れ狂う場面で存分に荒れ狂いながら上品さを保っているというのも不思議である。どうやったらあのような演奏が出来るのか。
第4楽章では、作曲者の指示の倍のテンポで開始し、皮相さを際立たせ、押しつけられた喜びがいかに空しいものであるか吐露されるのを聞いているかのよう。これほど的確にこの楽章を演奏できるというのはただ事ではない。
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