私見・静御前とは
源義経(源九郎判官義経)の愛妾とされる静御前。史上最も有名な女性の一人である。ただこの人の正体というのが実は怪しい。
静御前は白拍子ということになっている。母親は磯禅師で、この人が白拍子を始め、娘である静にこれを継がせたのだという。
ただ正史とされるものにおいて静御前が出てるものは『吾妻鏡』だけである。実在したかどうかは複数の文献に登場するかどうかで確定されるのであるが、静御前の場合、『吾妻鏡』にしか登場しない。『義経記』などは物語であり、正史ではない。当時は後の正史の史料とするための日記を家業とする公家がいくつもあったが、それらの日記にも静御前は一切登場しない。「日本一の白拍子」なら複数の日記に記述があった方が自然なのだが、そうした事実は一切ないのである。
『古事記』という書物がある。ご存じの通り、日本最古の歴史物語である。ここで恋の歌が歌われる場面があり、それは志都歌(しづうた)と呼ばれている。志都歌は吉野でも歌われている。ここが怪しいのである。
志都歌の「歌」を音読すると「か」である。つまり「しづか」になるのである。そして史上最も有名な恋歌(志都歌)の一つに、静御前が詠んだとされる「しずやしず しずの苧環繰り返し 昔を今になすよしもがな」(本歌は在原業平)がある。偶然とは思えない。 磯禅師以前にもどうやら女性が男装して歌って踊る習慣はあったようであり、また白拍子の始まりを『古事記』に出てくる倭武命が熊襲武を襲う際に、女装して舞い踊ったことに求める人もいる。
もし、『古事記』に出てくることがベースになっているのだとしたら、静御前は架空の人物ということになるのである。
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コメント
貴重なお話ありがとうございました 私も吾妻鏡は北条氏の為に書かれた捏造の歴史書と聴いていました 義経さんの正室郷姫が敵の出だったから後に語られないようにするため敢えてこのような女性を出して来たと聴いた事はあります あの北条氏ならそれ位の事はするのではないでしょうか?
投稿: 樋口友子 | 2023年10月13日 (金) 09時00分