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2012年10月29日 (月)

サー・チャールズ・マッケラスの遺言 チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」

2010年に亡くなったオーストラリア出身の指揮者、サー・チャールズ・マッケラスの最晩年の録音を紹介しようと思います。フィルハーモニア管弦楽団を指揮した、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」とメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲。いずれもライブ録音です。signum CLASSICSレーベル。

サー・チャールズ・マッケラス指揮フィルハーモニア管弦楽団 チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」アメリカ生まれのオーストラリア育ち、南半球出身の巨匠指揮者サー・チャールズ・マッケラス。シドニー交響楽団のオーボエ奏者を経て、英国とチェコスロヴァキアに留学。チェコのモラヴィアの作曲家であるヤナーチェクの作品とめぐり逢い、ヤナーチェク演奏、研究の第一人者となります。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのヤナーチェク録音が有名ですが、その他にも様々な演奏を世に送り出してきました。ただ玄人受けするタイプだっただけに日本での知名度は今一つ。ヨーロッパでは巨匠扱いでありながら、日本では「名前ぐらいは知っている」というクラシックファンが多かったような気がします。

サー(イギリスのナイトの称号「卿」)の称号を得ていることからか、どちらかといえば穏健派のイメージをもたれがちだったマッケラス。しかし、実際は、ベートーヴェンのメトロノーム指示に忠実な演奏を行ったり、通奏低音としてチェンバロを用いたモーツァルト交響曲全集を完成させたり、スコットランド室内楽団を指揮したすっきりとしたブラームスを演奏したり、ピリオド奏法を巧みに取り入れたベートーヴェン交響曲全集を作成したりと、進取の精神に富んだ名指揮者でした。

「悲愴」交響曲も「真夏の夜の夢」序曲も、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでのライブ録音。ただ聴衆の拍手が入っていなければライブ録音であることに気付かないほどの完成度の高さです。

交響曲第6番「悲愴」では、低音を強調して不吉さを増したり、第2楽章を速めのテンポで演奏したりしてわざと不安定な印象を聴く者に与えたりという工夫が随所に聴かれます。

「真夏の夜の夢」序曲も華やかなだけではない味わい深い演奏。

最後の最後まで革新的精神を忘れなかったマッケラスの音楽家魂に触れることの出来る演奏です。

サー・チャールズ・マッケラス指揮フィルハーモニア管弦楽団 チャイコフスキー 交響曲第6番「悲愴」(signum CLASSICS)タワーレコード

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