これまでに観た映画より(56) 「隠し剣鬼の爪」
DVDで日本映画「隠し剣鬼の爪」を観る。山田洋次監督作品。原作:藤沢周平。出演:永瀬正敏、松たか子、小澤征悦、吉岡秀隆、田畑智子、高島礼子、田中民(さんずいに「民」)、小林稔侍、笹野高史、倍賞千恵子、田中邦衛、緒形拳ほか。音楽:冨田勲。
藤沢周平の小説に出てくる架空の藩、東北の海坂藩(モデルは庄内藩である)を舞台にした映画である。
幕末の海坂藩。藩士の狹間弥市郎(小澤征悦)は江戸での任務に着くために旅立つ。狹間と片桐宗蔵(永瀬正敏)は、共に海坂藩の剣術指南役・戸田寛斎(田中民)の門下で「龍虎」と呼ばれるほどの腕前であり、双璧として、仲は良いがライバル関係であった。御前試合では片桐が勝ち、戸田から「隠し剣鬼の爪」と呼ばれる秘刀を頂戴している。
片桐は母親と妹の志乃(田畑智子)、女中の「きえ」(松たか子)と暮らしていたが、志乃は片桐の後輩である島田左門(吉岡秀隆)に嫁ぎ、きえも商家である伊勢屋に嫁入り。母は亡くなり、片桐家は火の消えたようになる。
三年後、片桐は偶然、きえと再会する。伊勢屋に嫁いだきえはやつれて元気がなさそうであった。その後、きえが病気で寝付いたと聞いた片桐はきえを伊勢屋から連れだし、離縁させ、再び片桐家の女中とするが、藩内では片桐がきえを妾として囲っているという噂が立つ。ある日、片桐はきえに実家に戻るよう命令する。
西洋砲術の訓練を取り入れている海坂藩。片桐も訓練にいそしむ。
そんな中、江戸で謀反の噂があり、数名が切腹。鍵を握っていると思われた狹間は捕らえられ、海坂藩に護送され、入獄する。
その狹間が脱獄し、農家に入って人質を取り、籠城する。片桐は家老の堀(緒形拳)や大目付の甲田(小林稔侍)は片桐に狹間を討つように命じる。
討ち入りの前夜、狹間の妻・桂(高島礼子)が片桐を訪ねてくる。狹間を討つのを止めるよう桂に懇願される片桐であったが、それは出来ないと突っぱねる。桂は家老の堀に討ち入りの中止を求めに行くと言って片桐家を後にする。
翌日、片桐と狹間は対決。狹間は隠し剣鬼の爪を使うよう片桐に命じるが、片桐は使わないと応える。果たして「隠し剣鬼の爪」とは…
片桐と狹間の友情と対決、片桐ときえのロマンスを二本柱にした良質の日本映画。温かみと迫力を兼ね備え、人間のあらゆる面にスポットを当てた秀でた作品である。
永瀬正敏の堂々とした演技、そして松たか子のきめ細やかな演技はいずれも秀逸である。
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