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2013年12月20日 (金)

観劇感想精選(107) 長澤まさみ主演舞台「ライクドロシー」

2013年12月1日 大阪・北新地のサンケイホールブリーゼにて観劇

午後5時からサンケイホールブリーゼで、M&O play プロデュース「テイクドロシー」を観る。作・演出:倉持裕。出演は、長澤まさみ、高橋一生、片桐仁(かたぎり・じん)、塚地武雅(つかじ・むが)、川口覚(かわぐち・さとる)、竹口龍茶(たけぐち・ろんちゃ)、吉川純広、銀粉蝶。

長澤まさみ二度目の舞台出演であり、ドランクドラゴンの塚地武雅は意外にもこれが初舞台になるという。

どことも知れない国で、童話やマンガの中のようなストーリーが展開される。ただし寓話ではない。コメディである。

プロセニアムであるが、見た目は黄金で豪華であるが、近くで見ると板で出来ているのがわかり、結構いいかげんな作りである。敢えてそうしているのだと思われる。

幕が開くと、三人の俳優が足の裏をこちら側に向けて仰向けに寝ている。長澤まさみの影アナ(後に録音であることがわかる)で、「今、ここにある三人の溺死体は、刑務所から脱獄した囚人達のものです」と語られるが、その中の一人、バイス(片桐仁)が悪夢から目覚めたようにバッと起き上がり、長澤まさみの影アナも「チッ」と舌打ちした後で、「生きていやがったか」で終わる。

バイス、アクロ(高橋一生)、リオ(塚地武雅)の三人はいずれも軽犯罪で逮捕されたのだが、この国では刑罰が異様に厳しいようである。三人とも囚人服を着ており、バイスとリオは手首を、リオとアクロは足首を鎖で繋がれている。バイスは左腕以外、アクロは左足以外は自由であるが、リオは左腕と右足が手錠と鎖で不自由である。脱獄したはいいが溺れてしまったのはバイスが平泳ぎで、アクロがクロールで泳ぐので、リオは左手と左足は平泳ぎ、右手と右足はクロールで泳がねばならず、曲芸のようで無理だと話す。

囚人服では目立つので、服が欲しいと思っていたところ、すぐ近くで交通事故があり、3人の男が転がってくる。3人は轢死しており、バイス、アクロ、リオの3人は死体から服をはぎ取り着る。ただ、リオだけは手足ともに自由が利かないため変な格好になってしまう。バイス、アクロ、リオは、3つの遺体を海に捨てる(死体役の役者達は横にゴロゴロ転がっていって、袖の近くで立ち上がって退場した。もう一工夫欲しい。役者が見苦しくなく退場するのは実は難しいのである)。そこへ、この国の女大統領であるザポット(銀粉蝶)の小間使いをしているマッツ(長澤まさみ)が現れる。マッツは彼ら脱獄囚3人がこれから行われる芸術祭の参加者だと勘違いして、宮廷へ招こうとする。3人も今は、芸術家になりすますのが得策と考え、宮殿に向かうことにする。だが、実はマッツは勘違いをしていたのではなかった……

コメディであり、深いメッセージが隠れているわけでもないので、純粋にストーリーを楽しめばいいだけである。

ちょっと素人劇っぽく感じられるところもあるが、演劇というのは幅の広いものであり、素人劇っぽいから駄目ということはない。ちょっと疲れている時などは、頭をフル回転させる演劇よりも、こうした気楽に観られる劇を楽しむ方が良いかも知れない。

片桐仁が、スラーという男を演じる川口覚のセリフの発し方を真似るなど、役者も楽しんで演技している。

コメディであるが、実は今日はハプニングがあった。スラーを演じていた川口覚が、笑いを取るべきではない場所で滑って転んでしまったのである。長澤まさみは川口を咄嗟に助け起こしたものの、観客が全員、川口が滑ったことに気付いて笑い始めてしまったということもあり、その場にいた役者3人が全員笑いをこらえようとして変な間が出来てしまう。長澤まさみが笑いを噛み殺しつつ何とかセリフを発したものの、もう舞台上に変な空気が出来上がってしまっており、客席は爆笑の嵐である。銀粉蝶が笑いつつも何とか芝居を進めようとするが、長澤まさみはいったん退場した後で、すぐに登場し、今度は滑ってこけた川口に面と向かって話しかけねばならないのである。これは笑いを抑えるのは難しい。ということで、長澤まさみは二言目までは言えたものの、思い出し笑いがこみ上げてきて、肩で笑う状態となってしまい、「もう駄目」とばかりにしゃがみ込んで、スカートに顔を押しつけ、笑いを殺すのに必死の状態になってしまう。会場は笑いではち切れんばかりになる。全てのシーンの中でここが一番受けてしまった。役者やスタッフにとっては不名誉なことかも知れないが、ハプニングを楽しむというのも生ものである演劇を観る醍醐味である。

 

終演後、塚地武雅が初舞台、そして地元・大阪での公演ということで感慨深いということを話した後で、「ここで、川口君からお詫びがあります」と振り、川口は照れながら「すみません、スライディングしちゃいました」と詫びた。

 

長澤まさみであるが、スタイル抜群ということもあって立ち居振る舞いは良かった。今日はロングスカートの衣装であったが、最近の長澤は美脚を売りにしているということもあってか、スリットが入っており、長澤も良い場面で脚が綺麗に見えるよう計算して演技を行っていたようである。

ただ、気になったのは、長めのセリフを言うときに、目を細めたり閉じたりすること。終演後、これから公演行う街の名を言うときにも長澤は目を閉じて思い出しながら語っていたため、癖なのだと思われるのだが、「セリフを思い出しながら喋っています」ということが観る者に伝わってしまうのである。今日はたまたま前から2列目での鑑賞(特に長澤まさみが好きなわけではないのに、そんな席で観るのは気が引けて、長澤まさみファンの人に席を譲りたくなったほどだ)であったため、そういった細かい傷に気付いたのだった。

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