コンサートの記(134) 広上淳一指揮京都市交響楽団第549回定期演奏会
2011年8月5日 京都コンサートホールにて
午後7時より、京都コンサートホールで、京都市交響楽団の第549回定期演奏会に接する。今日の指揮は常任指揮者の広上淳一。
8月に定期演奏会を開いている楽団は珍しい。以前は京響も12月定期があって、1年中定期演奏会を行っていたのだが、昨年から12月の定期演奏会はなくなり、第九コンサートのみとなった。他の楽団の団員は8月は避暑地で講習会を開いたり、音楽祭に参加したり、海外公演に行ったりしていることが多い。
なお、8月1日付けで、トランペット奏者の稲垣路子が入団。日本センチュリー交響楽団からの移籍である。センチュリー響からは杉江洋子も昨年、京響に移籍している。
「二、八(にっぱち)」という言葉が興行界にはあり、2月と8月は客が入らないことで有名である。いずれも1年で最も寒いときと暑いときで、2月は更に風邪のシーズンという条件も加わる。
そんな8月の演奏会であるが、京都コンサートホール大ホールは満員になった。
曲目は、ドヴォルザークの序曲「謝肉祭」、レスピーギの交響詩「ローマの祭」、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」(チェロ独奏:上村昇<京都市交響楽団首席チェロ奏者>、ヴィオラ独奏:店村眞積<たなむら・まづみ。東京都交響楽団特任首席ヴィオラ奏者>)。
いずれもCDは多く出ているが、コンサートでは滅多に演奏されない曲が並ぶ。今日の演奏会はロームの協力によってライブ録音され、発売される。
プレトークで広上は楽曲の解説をしていたが、それよりも着ていた京響の赤いTシャツの話の方が面白かった。指揮科の教授をしている東京音楽大学に向かうため、京響の赤いTシャツを着て目白を歩いていた広上は、パン屋の売り子さんから、「あ、可愛い」と言われ、赤のTシャツをベタ誉めされたそうである。最初はお世辞かと思っていたが、売り子の女の子が余りに誉めるので思わずメロンパンを二つ買ってしまったそう。京響のTシャツは3色あり、「女の人は白が似合う、男の人は赤が似合う、緑は両方似合う」と広上さんは「宣伝になりますが」と語っていた。なお、京響のTシャツは別デザインのものもあり、そちらは黒とグレーの2色がある。
ドヴォルザークの序曲「謝肉祭」。冒頭から低弦に威力があり、他の楽器も技術が高い。音色は漆塗りのような渋さだ。そんな渋い音色でありながら活気があるという独特の演奏である。
レスピーギの交響詩「ローマの祭」。冒頭こそ、京都コンサートホールの音響に阻まれて音が弱く聞こえたが、その後は迫力ある演奏が展開される。京都コンサートホールは舞台下手上方にボックス席のようなものがあり、そこに金管のバンダを置いての演奏。
ここぞという時の広上の追い込みは凄まじく、激流のような迫力があり、熱い演奏である。リリカルな部分での美しさもなかなかだ。第4曲「主顕祭」の入り組んだオーケストレーションを一本の指揮棒で見事に捌いてみせる広上の実力には感心させられる。これで音の色彩感がもっとあれば世界レベルに届く。
メインのリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」。チェロとヴィオラを独奏とした変奏曲である。チェロがドン・キホーテ、ヴィオラがサンチョ・パンサの役割を受け持つ。
ヴィオラ独奏の店村眞積は、2001年から今年の5月までNHK交響楽団のソロ首席ヴィオラ奏者を務め、今年の6月に東京都交響楽団の特任首席ヴィオラ奏者に就任している。特任首席ヴィオラ奏者という肩書きを見るのは初めてで何がどう特任なのかわからない。
チェロの上村、ヴィオラの店村ともに派手さはないが堅実な演奏を繰り広げる。広上は京響の輝かしい音を生かし、緩急自在の演奏を展開。ただ、首席奏者を並べた割りには(京響は他のオーケストラと違い、管楽器の首席奏者は後半にしか出ないことが多い)、出来は「ローマの祭」よりも下であるように思う。
| 固定リンク | 0
コメント