観劇感想精選(122) 井上芳雄&坂本真綾 ミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~」2014
2014年3月26日 大阪・西梅田のサンケイホールブリーゼにて観劇
午後6時30分から、サンケイホールブリーゼで、ミュージカル「ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~」を観る。出演者が井上芳雄と坂本真綾の二人だけというミュージカルである。原作:ジーン・ウェブスター、音楽&作詞:ポール・ゴードン、翻訳&訳詞:今井麻緒子、脚本&演出:ジョン・ケアード。東宝の製作、あしなが育英会の協力による公演である。
書簡体で書かれたウェブスターの小説「足ながおじさん」を「手紙を読み上げる」という形そのままに劇に仕立てており、二人でいる場面でも坂本真綾演じるジルーシャか井上芳雄演じるジャーヴィスのどちらかが書いた手紙の文章を読み、二人の会話も文章の中で読み上げられたものだけを言うことが多く、ダイアローグとなる場面はかなり少ない。音楽家は6人であり、舞台の裏で生演奏が行われる。
孤児院育ちのジルーシャ・アボットの文才に目を留めた富豪の家系であるジャーヴィス・ペンドルトンが、ミスター・スミスという偽名で学資金を払ってジルーシャを女子大学に進学させ、小説家に育てようとするピグマリオンな話である。
スミスというのはアメリカでは最も多い苗字(鍛冶屋系統の苗字であるとされる)であり、スミスというのが偽名だと見抜いたジルーシャは味気ない名前を嫌い、孤児院で光に照らされて壁に映った彼の姿からダディ・ロング・レッグズ(足ながおじさん)という呼称を作る。ただジルーシャはこんな酔狂な真似をするダディ・ロング・レッグズは老人に違いないと思い込んでいた。
舞台は二段仕立て。手前がジルーシャのいるスペースであり、孤児院、女子大学、農場の一室など、セットによる場面転換なしで、観客の想像力に委ねて展開していく。舞台中央奥に階段三段分高い場所があり、そこがジャーヴィスの書斎である。
ジルーシャのいる場所とジャーヴィスの書斎は繋がってはいるが、設定上は遠く離れており、互いの姿を見ることは出来ない。またダディ・ロング・レッグズ(足ながおじさん)であるジャーヴィスが、自身が支援者のダディ・ロング・レッグズであることを隠したまま階段を降りてジルーシャに会いにいく場面は何度かあるが、逆にジルーシャがジャーヴィスの書斎に行くのはラストシーンのみである。
書簡を読み上げる場面が続く中で、思わず溢れた感情が歌となっており、効果的である。
ミュージカルトップ俳優の井上芳雄と、声優・シンガーとしても人気の坂本真綾の歌唱は流石の出来。坂本真綾は声優だけに声音の変化もお手の物である。
ウェルメイドなミュージカルであった。
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