観劇感想精選(131) 淡路人形浄瑠璃「玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)」」
2011年1月29日 京都芸術劇場春秋座にて観劇
午後3時より、京都芸術劇場春秋座で、淡路人形浄瑠璃「玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)」を観る。人形浄瑠璃といえば大阪(人形浄瑠璃の別名の由来となった文楽座があった)が有名だが、淡路島でも人形浄瑠璃は行われているようだ。淡路島というと、芝居好きの芝右衛門狸が有名で、淡路島で人形浄瑠璃を行うホールの名前も「淡路島文化ホールしばえもん座」だそうだ。
演目の「玉藻前曦袂」は、日食の日に生まれたため、皇位に就くことの出来ない薄雲の皇子が、弟の鳥羽天皇に反逆を企て、配下の鷲塚金藤次に、故右大臣道春家に伝わる獅子王の剣を盗ませることから始まる。春道の娘・桂姫に横恋慕した薄雲の皇子は清水寺参詣に向かう桂姫を道中で襲うが、姫の恋人に追い散らされる。その恨みから薄雲の皇子は金藤次に桂姫の首を取るように命じる。
ここまでが前段で、今日はその後の「道春館の段」「神泉苑の段」「狐七化け」が演じられる。
「道春館の段」。浄瑠璃唄いも三味線も女性である。浄瑠璃の女性は年が上なので声が低く、地唄は何と歌っているのか聞き取れなかったが、セリフは聞き取れたので要所要所はわかる。人形は簡単な仕掛けのはずなのに表情が豊かだ。この段では金藤次が桂姫の首か獅子王の刀を渡すよう要求するが、道春の後室・萩の方は拒む。それでも引き下がらない金藤次に萩の方は桂姫が道春の娘ではないことを告げ、実子の初花姫と桂姫とでサイコロを競わせ、負けた方の首を差し上げることを約束させる。負けたのは初花姫であったが、金藤次は桂姫の首を強引に討ち取る。萩の方と道春家付きの采女之助は金藤次を刺し殺すが、死の間際に金藤次は桂姫が自身が捨てた娘で、獅子王の刀を盗んだことを告げる。
「神泉苑の段」。初花姫は入内して玉藻前を名乗る。神泉苑(今の二条城付近。一部が神泉苑として残っている)で、亡き姉の桂姫を偲んでいると、九尾の狐が現れ、玉藻前を殺してしまう。九尾の狐は玉藻前に化け、薄雲の皇子と日本を魔界にしようとする野望を語る(山田風太郎の「魔界転生」みたいだ)。そこに陰陽師の安倍泰成が現れ、神鏡で照らして九尾の狐を追い払う。
玉藻前に化けた九尾の狐は、時折早替えで、顔を狐に変える。その手並みは鮮やかだ。
「狐七化け」。那須原に逃げた九尾の狐を武者達が襲うが、一人は追い払われ、一人は恐怖の余り刀を取り落として逃げ去り、一人は顔を切られて討ち死にする。その後、殺生石となった九尾の狐は、玉藻前、座頭、花笠などに次々と化ける、人形浄瑠璃なので、人形を変えるだけなのだが、代わりに人形遣いの吉田新九郎が早替えを披露して、客席を沸かせた。
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