コンサートの記(160) 久石譲×京都市交響楽団
2014年9月3日 京都コンサートホールにて
午後7時から、京都コンサートホールで、「久石譲×京都市交響楽団」という演奏会を聴く。
スタジオ・ジブリの映画音楽などで知られている久石譲。久石譲というのは芸名であり、クインシー・ジョーンズがその由来である(クインシー=くいし=久石、ジョーンズ→譲)。最近では指揮者としての活動も活発化させており、今回の演奏では、全曲で指揮を担当するが、自作自演は前半のみであり、メインはチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」である。
曲目は、久石譲の室内オーケストラのための《シンフォニア》、久石譲のオーケストラのための《シンフォニック・ヴァリエーション「メリーゴーランド」》(映画「ハウルの動く城」より)、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」
今日の京都市交響楽団のコンサートマスターは泉原隆志(いずはら・たかし)。フォアシュピーラーは尾﨑平。フルート首席は前後半とも清水信貴。オーボエは前半はフロラン・シャレールが首席の位置に座り、後半は首席奏者の高山郁子に交代する。ティンパニは中山航平が務める。コンサートマスターの渡邊譲と首席クラリネット奏者の小谷口直子は今日は降り番である。
久石譲の自作自演による室内オーケストラのための《シンフォニア》は、かなり若い頃に書いたミニマル・ミュージックを発展させたものである。ジブリ・メロディーを期待している人は曲想に戸惑うかも知れないが、これもまた久石の顔である。3つの楽章からなるが、次第に高揚して明るく終わるのが特徴。第3楽章ではチャイコフスキーの「悲愴」交響曲第3楽章に似た音の進行があり、「悲愴」をプログラミングした理由もわかったような気がする。
今日は3階席で聴くので音響に問題はない。「3階席で聴くので音響に問題はない」などという文章は京都コンサートホールでしか生まれないと思うが。
久石譲であるが、指揮者としてはプロではないだけに、拍をきちんと刻むスタイルであり、見た目は個性ある指揮姿ではない。
久石本人と指揮とピアノによる、久石譲のオーケストラのための《シンフォニック・ヴァリエーション「メリーゴーランド」》。「ハウルの動く城」のメリーゴーランドのテーマによる変奏曲であり、完全な調性音楽である。誰が聴いても分かり易いし、親しみやすい。
久石は、ノンタクトで指揮を開始して、その後、ピアノを弾き、指揮台に戻ってしばらくしてから指揮棒を取り出して指揮をするということを二度ほど繰り返す。ピアノは蓋を完全に取り外したものであり、ステージ上、指揮台より客席側に置かれた。この曲ではもう一台のピアノがステージ上手奥に置かれており、それほど長い時間ではないが活躍する。
アンコールは、久石のピアノ弾き振り、京響のストリングスによる「One Summer's Day(あの夏の日へ)」。叙情味溢れる曲と演奏であった。
チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。
久石は少し速めのテンポでスタート。余り踏み込んだ文学的解釈はしない、良く言うと中庸を行く演奏である。
第2楽章は、4分の5拍子という変則的なワルツであるが、久石は4拍目と5拍目を指揮棒を持たない左手で示し、わかりやすくしていた。
第3楽章はノリが良く、京響の鳴りも良い。
最終楽章は徒に嘆き節を露わにしない演奏であるが、安定はしていたものの、目新しさはなかったように思う。
後半のアンコールは、チャイコフスキーのバレエ音楽「眠れる森の美女」より“ワルツ”。雅やかな演奏であった。
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