コンサートの記(162) 広上淳一指揮京都市交響楽団名古屋公演2014
2014年10月3日 愛知県芸術劇場コンサートホールにて
午後6時45分から、京都市交響楽団の名古屋公演2014を聴く。指揮者は京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一。
曲目は、ブルッフのスコットランド幻想曲(ヴァイオリン独奏:米元響子)とマーラーの交響曲第5番。
今日のコンサートマスターは泉原隆志。フォアシュピーラーは渡邊穣。オーボエ首席奏者の高山郁子は前後半ともに出演したが、フルート首席の清水信貴とクラリネット首席の小谷口直子は後半のみの出演である。マーラーの交響曲第5番は編成が大きいため、客演奏者を何人も招いており、大阪フィルハーモニー交響楽団のホルンの名手・蒲生絢子もエキストラ出演する。
愛知県芸術劇場コンサートホールに来るのは多分、今回が4回目。パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンの来日演奏会を聴いたのが最初で、続いて、ハンヌ・リントゥが指揮した名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会、そしてパーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団(hr交響楽団)の来日演奏会も聴いている。キャパはそれほど大きくはなく、残響も短めであるが、音は聞き取りやすく、良いホールである。ソワレでは、窓外の栄の街の夜景が美しく、ホールから見える夜景に関しては日本のコンサートホールの中でナンバーワンだと思えるが、やはり規制があるのか、今日は窓に紗幕が掛けられていた。
ブルッフのスコットランド幻想曲。ヴァイオリン協奏曲とは書いていないがヴァイオリン協奏曲である。ハープが大活躍するため、今日はハープはヴァイオリン独奏のそばに置かれた。
ヴァイオリンソリストの米元響子は京響とも何度か共演している。レコーディングなどは行っていないようだが、しっかりとした技術で聴かせる演奏家である。
黒のドレスの上に緋色のドレスを重ねるという独特の衣装で登場した米元は、磨き抜かれた音で抒情美溢れるヴァイオリンを奏でる。
広上の指揮する京都市交響楽団も立体的で密度の高い音作りであり、万全の伴奏を聴かせた。
米元はアンコールとしてクライスラーの「レチタティーヴォとスケルツォ」を演奏。小粋な仕上がりであった。
メインであるマーラーの交響曲第5番では、広上と京響のパワーが炸裂。スケール雄大にしてドラマティックな演奏が展開される。全ての音に神経が行き渡り、巨大なうねりが圧倒的な説得力をもたらす。広上もまたマーラーの指揮の泰斗であったレナード・バーンスタインの弟子であることを再確認させられることになった。
京響は弦も管も好調。ハープ奏者の松村衣里も要所要所で好演を聴かせた。
広上淳一は「のだめカンタービレ」に出てくる片平元(かたひら・はじめ)のモデルといわれているが、実際はそれほどジャンプするわけではない。ただ今日はジャンプを含め、ダイナミックな指揮で聴衆を魅了した。
オーケストラの力を含めれば、ジョナサン・ノット指揮バンベルク交響楽団の演奏によるマーラーの交響曲第5番が、実演で聴いた同曲の中で最高の出来であったが、表現力だけを取れば今日聴いた広上の指揮するものがマーラーの交響曲第5番の最良の演奏であるような気がする。
アンコールとして広上と京響はアルヴェーンの組曲「グスタフⅡ世」からエレジーを演奏。透明感溢れる演奏であった。
コンサート終了後、愛知県芸術劇場から出ると、栄の街のライトアップが夢のように美しい。個人的には名古屋の街は大好きである。
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