コンサートの記(163) 西本智実指揮 京都市交響楽団オーケストラ・ディスカバリー2014『VIVA! オーケストラ』第2回「オーケストラが描く世界」
2014年8月31日 京都コンサートホールにて
午後2時から、京都コンサートホールで、京都市交響楽団オーケストラ・ディスカバリー2014『VIVA! オーケストラ』第2回「オーケストラが描く世界」を聴く。指揮は西本智実。ナビゲーターはガレッジセールの二人。
曲目は、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」より冒頭(夜明けの部分)、ドビュッシーの「小組曲」(ビュッセル編曲)、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」から第1楽章“田舎に着いた時の愉快な気分”、ヨハン・シュトラウスⅡ世のポルカ「雷鳴と電光」、ベルリオーズの幻想交響曲より第4楽章“断頭台への行進”と第5楽章“ワルプルギスの夜の夢”
今日のコンサートマスターは泉原隆志(いずはら・たかし)。渡邊穣は降り番で、フォアシュピーラーには尾﨑平。フルートは清水信貴が前後半共に出る。
オーケストラを鳴らす才能に長けている西本智実。ただ、今日は京都コンサートホールということもあって、1階席では音の鳴りが今一つに感じた。広上淳一の指揮でなら良い響きに聞こえるのだが、広上も最初から京都コンサートホールで京都市交響楽団を上手く鳴らせたわけではなく、常任指揮者として何度も指揮したり客席で響きをチェックしている間に1階席でも良く響かせるコツを掴んだようである。
指揮姿は端正で、指示もわかりやすい。
リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の冒頭を指揮し終えた西本は、マイクを片手に振り向いて、「皆さん、こんばんは」と言ってしまい、「あ、違った、すみません、こんにちは」と言い直す。そして「ツァラトゥストラ」というのは、ゾロアスター教のことだと説明する。
ガレッジセールの二人が出てきて、ゴリが、「こんばんは」と西本の真似をした挨拶でボケる。「いや、今日はそういう日なのかなと思いまして」とゴリ。
ゴリが「ツァラトゥストラというのは?」と聞くので(台本にそう書いてあったのだろう)、西本は、「先程話してましたが、ゾロアスター教のことです」と答える。ガレッジセールの二人は、「ゾロアスター教??」となる。この時、子供が叫んだので、西本が手を振る。ゴリは、「え? 今のゾロアスター教の方ですか?」とボケる。
西本はトークが上手くないと聞いていたが、今日も「2001年宇宙の旅」を「2001年世界の旅」と言い間違えたり、「ペルシャなので今のイラク」(イラクもペルシャ領だったので間違いではないが、中心地から見ると、ペルシャは今のイランである)と言ったり、安心して聞いていられるタイプの喋りではない。
交響詩の説明や、全音音階などの技法解説も専門的であり、もう少し噛み砕かないと初心者には何のことを言っているのかわからないであろう。
ドビュッシー作曲、ビュッセル編曲による「小組曲」。管楽器の歌わせ方は詩情豊かであるが、弦楽は音が濁り気味。アンサンブルが微妙にずれているのだと思われる。西本は指揮者としては若いので、詩情豊かに整えるということはまだ得意ではないのだろう。
ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」より第1楽章。演奏前にガレッジセールのトークがあり、ゴリが「西本さん、格好良かった。髪をかき上げるのが凄く格好良かった」と言い、西本が「髪が長いので」と答えるとゴリは「俺ら女性の指揮者と仕事するの初めてだから、髪かき上げるの今日初めて見て、男の指揮者、例えば広上さんとか髪かき上げるのって」と言って、川田から「例が飛躍しすぎ。広上さんはかき上げたくても(髪が)ない」と突っ込まれる。
西本はスコアを譜面台に置いてめくってはいるが、見てはいないそうで、全て暗譜しており、スコアを置いてめくるのは「作曲家と繋がっていたい」からだと述べて、ゴリから「すげえ格好いい」とまた誉められる。
「田園」の演奏であるが、弦と管のバランスが悪いところがあり、管が強すぎる傾向にある。ピリオド・アプローチを意識した演奏であり、ビブラートはやや抑えめで、弦楽器の歌わせ方もピリオド風である。
休憩を挟んで、後半の第1曲となるヨハン・シュトラウスⅡ世のポルカ「雷鳴と電光」。西本は大太鼓が雷鳴を、シンバルが電光を表現すると説明する。
端正且つ快活な演奏で、この曲は文句なしである。演奏終了後に出てきたゴリは「光が見えた、音聞こえた」と語る。
最後はベルリオーズの幻想交響曲より第4楽章“断頭台への行進”、第5楽章“ワルプルギスの夜の夢”
ベルリオーズの幻想交響曲は西本が得意としている曲目である。西本は、「ベルリオーズ本人がモデルになった男が、毒を飲んで自殺を図り、死にきれずに悪夢を見るという物語がある」と説明し、第4楽章では、「夢の中で彼女を殺してしまった男が、断頭台、ギロチンですね、に向かって歩いていく姿を描いたもので、首が飛んで跳ねる姿も描かれています」と語る。ゴリが、「え? じゃあ、僕らクラシックに疎い人間でも首が飛び跳ねるのわかるんですか?」と聞くと西本は「わかるように演奏したいと思います」と答えた。
集中力、描写力ともに優れた演奏であるが、第5楽章のラストなどはやはり弦と管のバランスがもう一つで、今度は木管が十分に聞き取れなかったりした。ただ、西本の年齢から考えればこれでも上出来であろう。
ゴリは、「首飛んで跳ねるの見えた。弦楽器がポン、ポンってやるの(ピッチカートのこと)そうですよね?」と言う。
アンコールは、幻想交響曲と同じ失恋の曲ということで、オッフェンバックの歌劇「ホフマン物語」より“舟歌”が演奏される。歌劇場でも活動している西本だけに、しっとりとした好演に仕上がった。
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