コンサートの記(170) 大野和士指揮 京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」2014
2014年12月27日 京都コンサートホールにて
午後2時30分から京都コンサートホールで、京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」を聴く。指揮は日本人指揮者界の王貞治に例えられる大野和士。京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一はさながら日本人指揮者界の長嶋茂雄だ。
知的アプローチを特徴とする大野和士がいよいよ京都市交響楽団の年末の第九に登場である。今年の第九は2回公演で、初日の今日は第九の前にサミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」が、明日はラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」が演奏される。
今日のコンサートマスターは、ソリストとしても活動している四方恭子が客演コンサートマスター(コンサートミストレス)として入る。フォアシュピーラーは泉原隆志。
大野和士は今年の6月にもリヨン国立歌劇場管弦楽団の来日演奏会の指揮で聴いているが、最近になって急速に外見が老けている。どうしたのだろう? 実は佐渡裕より一つ上なだけなのだが、とてもそうは見えない。
バーバーの「弦楽のためのアダージョ」。少し速めのテンポを採用。哀感を色濃く出しているが、ギリギリのところでセンチメンタリズムには陥らないバランスの良い演奏である。
ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」。
ソプラノは本来は松岡万希が歌う予定だったが体調不良により降板。中国人ソプラノのリー・シューインが代役を務める。
テノールの西村悟は、佐渡裕指揮ケルン放送交響楽団の第九に引き続いての登板。メゾソプラノは池田香織、バリトンは須藤慎吾。合唱は京響コーラス。
京都市交響楽団の音色は幾分あっさりしてるがアンサンブルは緻密であり、アポロ芸術的な第九となる。
大野の指揮は、指揮棒と左手を小刻みに揺らして、細部まで操ろうとするのが特徴。昔から安定感のある指揮姿でそれは変わらないが、棒をこれほど細かく動かすことはなかったのだが。
弦主導の演奏であり、フルートが目立つ場面でも大野は口に人差し指を当てて「小さく」と指示していた。
一方でティンパニは思いっ切り叩かせる。
ティンパニの中山航平はやや硬めの音色で力強い音を出し、大野の指事に応える。
ピリオドの影響であるが、たまに弦がノンビブラートで透明な音を出すぐらい。この程度ならピリオドの演奏でなくてもあり得るのでピリオドの影響はほぼなしと見ていいだろう。
ティンパニとピッコロが、普段聴き慣れた第九とは違う音を出していたので、楽譜はあるいはベーレンライターか、ベーレンライターを基に手を加えたものである可能性が高い。
テンポであるが中庸である。第3楽章の冒頭と中間部でやや遅くしたのと、第4楽章で速めの場面があっただけで、基本的に自然体の演奏であった。
合唱の場面になると大野は一緒に歌いながら(といっても口を動かしているだけだが)合唱を誘導。両手よりも口元で指揮しているという印象である。
非常にスマートで爽やかなベートーヴェン。私の好みとはことなるが満足した人も多いと思われる。
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