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2015年3月24日 (火)

コンサートの記(181) 「ラオスありがとうコンサート」

2015年2月14日 京都コンサートホールにて

午後5時から京都コンサートホールで「ラオスありがとうコンサート」を聴く。ラオスから京都市動物園に子象4頭が贈られたのを記念しての演奏会。京都市交響楽団の演奏。指揮は期待の若手、田中祐子である。

京都洛中ロータリークラブ創立35周年記念事業も兼ねたコンサート。京都洛中ロータリークラブが7年前に国際奉仕活動としてラオスの中学校の校舎建設に尽力。その縁で4年前に京都市にラオス名誉領事館が開設され、そのラオス名誉領事館と京都市の協力によりラオスから子象が贈られることになったのだという。

ということで、ステージ上に京都洛中ロータリークラブの半井隆利会長、門川大作京都市長が上がってスピーチを行う。客席に京都市議が何人か来ていたほか、ラオスとの交渉時に外務大臣だった代議士の前原誠司(京都2区)も客席に来ており、紹介された。

駐日ラオス人民共和国大使館・特命全権大使であるケントン・ヌアンタシン閣下も京都コンサートに来ており、ラオ語でスピーチを行った(日本語通訳付き)。象の輸出はワシントン条約で厳しく規制されており、今回4頭まとめての寄贈となったのも「繁殖目的なら可」となったためだそうだ。

なお、バレンタインデーということで、来場者全員にチョコレートがプレゼントされた。
曲目は、チャイコフスキーのくるみ割り人形より「花のワルツ」、ラヴェルの管弦楽伴奏歌曲集『シェエラザード』より第1曲「アジア」(ソプラノ独唱:田中郷子)、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番より第1楽章(ピアノ独奏:森上芙美子)、ヘンリー・マンシーニの『ハタリ!』より「子象の行進」、ヨハン・シュトラウスⅡ世のポルカ「雷鳴と電光」、サン=サーンスの『動物の謝肉祭』より「白鳥」(オーケストラ編曲版)、ビゼーの『カルメン』より「闘牛士の歌」、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」から第4楽章、「ラオスの花チャンバー」(合唱:京都市少年合唱団)、「It's a Small World」(合唱:京都市少年合唱団)

ポディウム席には制服姿の高校生の集団が来ていたが、女子が圧倒的に多く、男子が少ないという構成であったため、女子が多数を占めている京都市立京都堀川音楽高等学校の生徒である可能性が高い。

田中祐子は1978年、名古屋生まれの女性指揮者。女性クラシック音楽家は生年を記載しない場合が多いが、田中の場合は公式プロフィールに生年がはっきり記されている。コンクール歴は東京国際音楽コンクール・指揮者部門入選(優勝者は出なかったが上位3人が全員女性だったことで話題になった年の3人の中の一人である)、ブザンソン国際指揮者コンクールセミファイナリス、ショルティ国際指揮者コンクールのセミファイナリストなどで、特筆すべき成績ではないかも知れないが、日本国内のオーケストラを数多く指揮している他、クロアチアでも指揮活動を行っている。
東京音楽大学卒業後、東京藝術大学大学院指揮科修士課程修了。指揮を尾高忠明、広上淳一、高関健、汐澤安彦に師事、下野竜也のマスタークラスも受講しているということで、京都市交響楽団の常任3人全てに師事していることになる。

チャイコフスキーのくるみ割り人形より「花のワルツ」。この曲のみ何故かスケールがやや小さかったが、田中は日本人指揮者らしい細やかな表情付けで聴かせる。京響の音色も輝かしい。

今日の京都市交響楽団のコンサートマスターは渡邊穣。泉原隆志は今日は降り番で、フォアシュピーラーに尾﨑平。フルート首席奏者の清水信貴は前半から登場したが、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番のみステージに上がらなかった。オーボエ首席の高山郁子も今日は降り番で、首席の位置には前後半共にフロラン・シャレールが座る。クラリネット首席の小谷口直子も今日は降り番である。

来賓の挨拶を挟んで、ラヴェルの管弦楽伴奏歌曲集『シェエラザード』より第1曲「アジア」。ソプラノ独唱の田中郷子は兵庫県立西宮高校音楽科を経て、大阪音楽大学卒業。その後、神戸大学大学院修了という謎の進路を選んでいる。「ラオスの子供達に音楽を・ムアンムアンミュージック」共同代表ということで今日の独唱者に選ばれたようだ。

ラヴェルの管弦楽伴奏歌曲集「シェエラザード」は、録音自体が少ない。千葉にいる頃にシャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団ほかによる演奏を聴いたことがあるが、京都にはそのCDを持ってこなかったので、長いこと聴いたことがない。

田中祐子は京都市交響楽団から彩り豊かな音を弾き出し、田中郷子の歌も達者である。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番より第1楽章。ピアノ独奏の森上芙美子(もりかみ・ふみこ)は、大阪音楽大学音楽学部器楽科ピアノ専攻を経て、チャイコフスキー記念モスクワ音楽院大学院修了。彼女も「ラオスの子供達に音楽を・ムアンムアンミュージック」共同体表である。

森上のピアノであるが、序奏の時は、ミスタッチや指のもつれなどが目立ち、危なっかしいが、ライブ向きのピアニストのようで徐々に調子を上げ、カデンツァに入ると堂々としたピアノ演奏を展開する。

田中祐子指揮の京響も涼やかな響きを奏でる。

後半。ヘンリー・マンシーニの「子象の行進」。編曲は穏やかで迫力には欠けるものであったが(編曲者不明)、田中祐子指揮の京響は優しい音色による演奏を行った。

ヨハン・シュトラウスⅡ世のポルカ「雷鳴と電光」。リズム感の良い演奏である。
田中祐子の指揮であるが、基本的には端正であるが、時に伸び上がったり、ジャンプしたり、両手を拡げたまま飛び上がるなどバレエのような動きもする。

サン=サーンスの「白鳥」。本来はピアノ・デュオとチェロ独奏のための音楽であるが、今回はヴァイオリンの演奏で始まり、ハープのチェレスタの伴奏に乗ってチェロが主旋律を奏でる。その後、主旋律は第1ヴァイオリンに移る。
耽美主義的な編曲であったが編曲者は不明である。

ビゼーの「闘牛士の歌」。余談であるが「闘牛士の歌」はJOYSOUNDのカラオケに入っており、私は歌ったことがある。
田中祐子指揮の京都市交響楽団はドラマティックな演奏を展開。田中は日生劇場や東京室内歌劇場などでオペラも振っているそうだが、オペラ指揮者としても適性がありそうである。

ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」から第4楽章も迫力のある演奏であった。

京都市少年合唱団も加わった「ラオスの花チャンバー」。日本語歌詞は無料パンフレットに書かれている。旋律であるが、お隣の国であるベトナムの音楽に似ている。ベトナム国立交響楽団の来日演奏会を私は2度聴いており、本名徹次指揮ベトナム国立交響楽団によるベトナム音楽のCDも持っているので類似性がはっきりとわかる。

最後は、「It's a Small World」。東京ディズニーランドで流れているものが有名だが、今日の歌詞は新たに訳詞されたものを使っていた。

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