コンサートの記(185) ペンギン・カフェ来日公演2014京都
2014年9月24日 京都コンサートホール小ホール「アンサンブルホール・ムラタ」にて
午後7時から、京都コンサートホール小ホール「アンサンブルホール・ムラタ」で、ペンギン・カフェの来日演奏会を聴く。ペンギン・カフェは日本各地で演奏会を行うが、今日の京都公演などでは山田せつ子の振付によるダンスも披露される。
ペンギン・カフェは、カフェと付いているが本当のカフェではなく、イギリスのミニマル系コンテンポラリーバンドである。1970年代にサイモン・ジェフスが創設したペンギン・カフェ・オーケストラが基となっており、サイモンの死後は息子のアーサー・ジェフスがリーダーとなってメンバーを一新し、ペンギン・カフェに名前を縮めて活動を続けている。
曲目は、「Telephone」、「Catania」、「Blue Jay」、「Swing the Cat」、「Solaris」、「1420」、「Nothing Really Blue」、「Landau」、「Giles Farraby's Dream」、15分間の休憩を挟んで、「Southern Jukebox」、「Odeon」、「Bemba」、「And Yet」、「Paul's Dance」、「Popetum Mobile」、「Bean Fields」、「Taxi」、「Bemba」、「Black Hibiscus」
リーダーのアーサー・ジェフスを始め、複数のメンバーが幾つもの楽器をこなすという器用な演奏家の集団である。トークはアーサー・ジェフスが全て英語で行うが、月曜日に聴いたグレン・ミラー・オーケストラ同様、音楽で使われる単語はバラエティに富んだものではないため何を言っているのか大体はわかる。アーサー・ジェフスはまず、「今晩は雨の中をお越し下さりありがとうございます」と言った後で、「私の父親(サイモン・ジェフス)は、来日した際に、よく京都の寺院に行って曲想を練っていました。ですので、今日は音楽の故郷に帰ってきたような心地です」と続ける。
ダンスであるが、木野彩子と小田直也(大駱駝艦)がペンギンの格好をして行う。衣装担当は岩切明香。
まず、舞台下手側からペンギンの顔の阿像を手にした小田直也が、上手側から同じく吽像を手にした木野彩子が出てきて、ステージ下の通路に降り、中央に来たところで、ペンギンの顔をかぶり、再度舞台に上がってメリハリのしっかりしたダンスを披露する。その後は、ユーモラスな振付のダンスなども行われた。アーサーは二人のダンサーを「マジック・フレンズ」と呼ぶ。ちなみに聴衆のことは「ラブリー・オーディエンス」と呼び、ここでアーサーは拍手が欲しかったのだが、拍手が起こらなかったため、自分で拍手をして聴衆にも促し、笑いを誘った。
音楽性であるが、やはりイギリスのミニマル・ミュージックということで、ミニマル・ミュージックの創設者とされるマイケル・ナイマンを想起させるものがある。一方で、サイモン・ジェフスは坂本龍一と友人であり、坂本龍一と同じエイベックスから地球に優しい、デジパック特別仕様のジャケットのCDをリリースしていたということもあって、坂本龍一的な音楽を奏でることもある。坂本龍一はマイケル・ナイマンのことが嫌いなようだが、元々は坂本龍一もナイマンの影響を受けてミニマル・ミュージックを作成していたということもあり(「HAPPY END」という曲が坂本が作曲したミニマル・ミュージックの中では一番有名だと思われる)、音楽性は親しいものがあるのである。イギリスやアイルランドの民俗音楽も取り入れており、アーサーが「アイルランドや、スコットランド(U.K.からの独立が住民投票で否決された直後ということもあり、アーサーが「スコティッシュ」と強調して言って笑いを取っていた)の音楽で使われる楽器を演奏します」と言って、ティン・ホイッスルを吹いたりした。
ヴァイオリンも演奏されるが、クラシック寄りのポピュラー音楽であるため、フィドルと書いた方が適切な気がする。コントラバスはピッチカートのみの演奏であるため、ジャズ風にダブルベースというべきであろう。
ラストの曲目である「Black Hibiscus」は、ショパンの夜想曲第20番(遺作。ちなみにショパンの場合は、遺作というのは最後の作品というわけではなく生前に楽譜が出版されなかった曲のことである。以前は、「習作同然」と見なされて余り演奏されない曲の方が多かったのだが、1980年代からは演奏される機会が増えた。夜想曲第20番は映画「戦場のピアニスト」でメインテーマとして扱われたため、ショパンの遺作の中でも知名度がかなり高い1曲である)の旋律を基にしたもので、中南米のリズムを取り入れて哀切なメロディーが賑やかに演奏された。
アンコールは2曲。まず、「Harry's Piers」では振付担当の山田せつ子が自身でソロダンスを披露し、ラストの「Music For Found Harmonium」はアーサがタイトル通りファウンド(見つけた。京都で捨てられていたものをたまたま拾ったのだという)ハルモニウム(小型オルガン)を演奏、大いに盛り上がる。
ポピュラー、クラシックのどちらの要素も兼ね備えたバンドであるが、どちらかというとポピュラー好きの聴衆が多いようで、自然発生的に手拍子が起こるなど、楽しい演奏会で会った。
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