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2015年4月17日 (金)

コンサートの記(186) 広上淳一指揮京都市交響楽団 「スプリング・コンサート」2015

2015年4月4日 京都コンサートホールにて

午後2時から京都コンサートホールで、京都市交響楽団スプリング・コンサートを聴く。指揮は京都市交響楽団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一。

京都市交響楽団のスプリング・コンサートは2009年に広上淳一の指揮によって始まり、昨年を除く毎年、広上が指揮を務めている(昨年はダグラス・ボストックが指揮)。

曲目は、ルロイ・アンダーソンの「舞踏会の美女」、宮川彬良編曲のファンタジック!「白雪姫」(歌とほほえみを、ハイホー、いつか王子様が)、デュカスの交響詩「魔法使いの弟子」、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」から第1楽章“海とシンドバッドの船”、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」、ラヴェルの「ボレロ」

全体の演奏時間は短めだが、これにはわけがあり、CGを京都コンサートホールのパイプオルガンや来賓席、天井などに映すプロジェクションマッピングの演出があり、そのために長い曲は演奏しにくいのだ。映像を背面一杯に映すために、今日はP席と呼ばれる指揮者と対面する座席は取り払われている。

今日の京都市交響楽団のコンサートマスターは渡邊穣。泉原隆志は降り番でフォアシュピーラーに尾﨑平。フルート首席奏者の清水信貴とオーボエ首席の高山郁子は全曲に出演するが、クラリネット首席の小谷口直子は今日は降り番である。

壁面に映像を映すため、ホール全体を暗めにして、奏者達は譜面台の上に置かれたテーブルライトのようなものを頼りに楽譜を読む。指揮者である広上には上から細い光が幾つか差している。

今日は前から6列目で、京都コンサートホールの音響だと直接音が強すぎたり、逆にステージから近い割りには音が飛んでこなかったりすることもあるだが、広上の指揮なので良い音で聴くことが出来た。

ルロイ・アンダーソンの「舞踏会の美女」。広上指揮ならではの弦の抜けの良さが心地良く、歌い回しもお洒落である。壁面にはシャンデリアの影などが浮かび上がる。

宮川彬良編曲のファンタジック!「白雪姫」。この曲は映像なしの演奏。普通の演奏の時はホールは全体的に明るくなる。宮川の編曲も演奏もチャーミングだ。

デュカスの交響詩「魔法使いの弟子」。ゲーテのバラード(物語詩)を題材にした交響詩で、映画「ファンタジア」でミッキーマウスが魔法使いの弟子役をしていることでも有名である。ちなみに「ファンタジア」は制作後70年以上経ったので、米国においても著作権フリーのはずであり、フィラデルフィア管弦楽団が「魔法使いの弟子」の場面をYouTubeにアップしていたが、今では「複数の著作権違反という指摘により」削除されている。米国でも著作権は切れているはずなのだが、映画の著作権は制作後70年(アメリカの場合)という決まり(映画の場合、誰が一番権利を持っているかわからないので一律に制作何年経過したかで著作権が切れるか決まる)を知らない人が複数いるとYouTubeは削除になるというシステムなのだろう。無知は怖い。

京響の映像でも、コンピューターで描かれた箒が水を汲み、溢れて水浸しになる場面が青一色の光で表されたりする。

広上の指揮は演出上手だ。冒頭のミステリアスな雰囲気作りも優れているし、ファゴットによるユーモラスな旋律の歌わせ方なども聴いていて楽しい。斧で箒を斬るシーンや、水浸しのシーンの迫力もなかなかである。

リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」から第1曲“海とシンドバッドの船”。残忍な王を表す赤い光と癒やしのシェエラザードの青の光の後で、海表す鮮烈な青い光が流れたり明滅したりする。
ヴァイオリンソロの渡邊穣の音色も美しい。
広上の立体感ある音作りも鮮やかだ。

ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」。この曲もプロジェクションマッピングなしでの演奏である。ノーブルな演奏であるが、途中で速度を速くして情熱的な彩りを添えたのが印象的であった。

ラヴェルの「ボレロ」。広上と京響が京都で「ボレロ」を演奏するのはこれが初めてのはずである。以前にもこのコンビで「ボレロ」を演奏したことはあるが、舞台は大阪のザ・シンフォニーホールであった。その時は広上は、最初のうちは腕を組んで楽団員から目をそらしながらちょっとした頭の動きだけで指揮をし、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが第1主題を弾くところで両手を大きく拡げて視覚的な演出をしていたが、今日は舞台上が暗めということもあり、最初から指揮棒を動かして指揮する。少し小さめの音が欲しいときはやはり今旋律を吹いている奏者から目をそらして横を向いて指揮する。楽団員というのは、指揮者が自分と正対すると無意識のうちに大きな音を出してしまうものらしい(NHK交響楽団首席オーボエ奏者:茂木大輔の証言)。

テンポは中庸であり、各楽器が出す透明な響きが美しい。盛り上げ方も上手であり、広上は今日も第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが共に第1楽章を奏でる場面で両腕を拡げて「開放的に」という指示を出す。クライマックスであるトランペットソロも澄んだ響きで上質であった(トランペット:早坂宏明)。

映像は赤や緑色の水滴が浮上していく様を描いたもの。音楽に合っているのかどうかは微妙だったが悪くはない。

アンコール。まず、ヨハン・シュトラウスⅠ世の「ラデツキー行進曲」。広上は客席の手拍子も指揮したため、この曲はノンタクトで振った。

楽団員達と握手をし、先に帰らせて、広上一人がマイク片手にステージ上に残り、スピーチをする。先日、広上淳一と京都市交響楽団が第46回サントリー音楽賞を受賞したが、広上はまずそのことの喜びを述べる。その間に電子ピアノがステージ上に運び込まれ、広上のピアノソロでコンサートを終えることが広上本人から告げられる。広上は若い頃は「日本人指揮者界屈指のピアノの名手」といわれたが、最近は余りピアノを弾く機会がないためか、「(ピアノの)腕が錆びついておりまして」と述べる。演奏するのは、昨年の大河ドラマ「軍師官兵衛」の音楽を手掛けた菅野祐悟が滋賀県のために書いたピアノソロ曲「感謝」。ミディアムテンポのナンバーである。電子ピアノであるため音色の変化もなく、音も小さめではあったが、叙情味に溢れた曲と演奏であった。

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