コンサートの記(211) 吉田裕史指揮ボローニャ歌劇場フィルハーモニー レオンカヴァッロ 歌劇「道化師」
2015年9月13日 京都国立博物館中庭特設会場にて
京都コンサートホールの最寄り駅である北山駅から京都市営地下鉄に乗り、京都駅まで出て、JRに乗り換え。更に東福寺駅でJRから京阪に乗り換えて、七条にある京都国立博物館明治古都館前中庭特設ステージで行われる、2015 日伊オペラ国際共同制作「道化師」を観る。午後6時開演。今回の上演は、今日まず京都国立博物館での上演が行われ、今月の17日と19日には姫路城での野外上演が予定されている。
屋外なので天候が心配であったが、今日はすっきり晴れた。ちなみに雨天の場合は、他の会場での上演が予定されており、更に振り替え上演の可能性もあったとのこと。
吉田裕史(よしだ・ひろふみ)指揮ボローニャ歌劇場フィルハーモニーの演奏。吉田はボローニャ歌劇場首席客演指揮者に就任したばかりであり、昨年からはボローニャ歌劇場フィルハーモニーの芸術監督の地位にもある。東京音楽大学指揮科および同研究科修了。広上淳一の弟子の一人である。ウィーン国立音楽大学に留学し、指揮のマスターコースでディプロマを獲得。以後、ヨーロッパの歌劇場を中心に活躍し、特にイタリアでの活躍が目立つ。
演出は、ボローニャで劇作家、演出家、俳優として活躍しているガブリエーレ・マルケジーニが担当。人海戦術を得意とするようで、今日も仮設舞台の上に出演者が溢れんばかりに繰り出している。これだけ出演者が多いと楽屋の確保が難しくなるのだが、京都国立博物館には、明治古都館(展示の予定はしばらくないとのこと)と平成知新館の二つの大規模施設があり、それを楽屋に転用することが可能だったと思われる。
歌劇「道化師」が始まると、ステージ上にはバレリーナ達が現れて、バレエを舞う。そして、京都国立博物館の平成知新館に行く道が通路として空けられており、そこをキャストが歩いて出てくる。先頭のピエロはタッパの高い一輪車に乗っており、他のピエロ達もジャグリングなどを披露している。この場面などにいるのが主要キャストになり変わって演技だけをするカバーキャストと呼ばれる人だと思われる。ただ、ブロードウェイのアンダースタディーのように、主要キャストに事故発生の時は代役も務められるよう、歌唱力も兼ね備えた人が選ばれているのかも知れない。
吉田裕史指揮のボローニャ歌劇場フィルハーモニーであるが、野外というハンデもあって音は小さめである。ただ、カンタービレは見事であり、流石はイタリアのオーケストラである。
主要キャストは、フランチェスカ・ブルーニ(ネッダ/コロンビーナ。ソプラノ)、ニコラ・シモーネ・ムニャイーニ(カニオ/パリアッチョ。テノール)、ドメニコ・バルツァーニ(トニオ/タッデオ。バリトン)、武井基治(たけい・もとはる。ペッペ/アルレッキーノ。テノール)、フェデリコ・ロンギ(シルヴィオ。バリトン)。総出演者は数えたわけではないが、200名近くになるのではないだろうか。とにかくステージ上に人が多い。
名アリアとして名高い「衣装を纏え(衣装をつけろ)」は、前奏曲にまずそのメロディーが登場し、ラストもオーケストラだけが「衣装を纏え」のメロディーを奏でて終わる。「衣装を纏え」は映画「アンタッチャブル」で、ロバート・デ・ニーロ演じるアル・カポネが歌劇場のボックス席でこのアリアを聴いて涙を流し、直後に手下から「殺害成功」の報告を受けてニヤリと笑うという、カポネの二面性を表す場面に使われていることでも知られている。
レオンカヴァッロの代表作にして唯一の有名曲である歌劇「道化師」。「ヴェリズモ(現実)」と呼ばれた、人間の残酷な本質を描こうとするオペラ音楽運動を代表する作品である。上演時間が短いので、マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」と組で上演されることも多いのだが、今回は屋外上演で、座椅子もプラスチック製のものということで、「道化師」のみの上演、更に第1幕と第2幕の間に20分間の休憩があり、間奏曲は第2幕の前奏曲的に演奏される。
主要キャストの歌唱はいずれも充実しており、舞台裏に階段を設けて上から俯瞰で舞台を見ているキャストがいるという演出も効果的である。
ストーリー自体は、それほど洗練されておらず、巧みでもないのだが、こうしてオペラとなったものを観ると、やはり心動かされる。
屋外で幕がないため、最後は吉田裕史が終演の挨拶を行い、お開きとなった。
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