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2015年12月 4日 (金)

コンサートの記(217) シベリウス生誕150年 オッコ・カム指揮フィンランド・ラハティ交響楽団「シベリウス交響曲サイクル(チクルス)」初日

2015年11月26日 東京・初台の東京オペラシティコンサートホール“タケミツ メモリアル”にて

午後7時から、初台にある東京オペラシティコンサートホール“タケミツ メモリアル”で、オッコ・カム指揮フィンランド・ラハティ交響楽団による「生誕150年 シベリウス交響曲サイクル(チクルス)」の第1夜を聴く。

日本人作曲家として最も知名度の高い武満徹の名をメモリアルとして掲げている東京オペラシティコンサートホール。海外のアーチストからは「タケミツホール」という愛称で親しまれている。合掌造りのような三角形の高い屋根を持つことが特徴である。ただ、ステージ上に反響板はあるので、京都コンサートホールのように「音が高いところに留まって降りてこない」というようなことはない。
東京の中でも好きなコンサートホールだったのだが、京都に移ってからは来る機会自体がなくなってしまった。


午後6時20分と、東京の常設オーケストラの演奏会に比べると遅めの開場である。


フィンランドを代表する指揮者の一人であるオッコ・カムは、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団、フィンランド国立歌劇場の音楽監督としての活躍を経て、2011年秋にシベリウス演奏で世界的な評価を受けているラハティ交響楽団の首席指揮者と、ラハティ交響楽団が主役となるラハティのシベリウス音楽祭の芸術監督に就任している。これまで京都市交響楽団に2度客演、いずれもシベリウスの作品を指揮しているほか、以前は日本フィルハーモニー交響楽団にもポストを持っており、よく指揮していた。池袋にある東京芸術劇場コンサートホールで行われた、日本フィルハーモニー交響楽団のサンデーコンサートを指揮したことがあり、メインのプログラムであるシベリウスの交響曲第2番の演奏が、私が本当の意味でのシベリウスの醍醐味を知った初めての経験となった。ということで、カムは私がシベリウスに開眼するきっかけを作ってくれた恩人でもある。
1982年に当時手兵であったヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団と共に来日し、シベリウス交響曲全曲演奏の企画を行っているが、交響曲第1番と第4番、第7番の3曲は日本におけるシベリウスの泰斗であった渡邊暁雄に指揮を譲っており、カム一人による日本におけるシベリウス交響曲チクルスは今回が初めてになると思われる。

今回のシベリウス交響曲チクルスは交響曲の番号通りの演奏される。ということで、今日は交響曲第1番と第2番が演奏される。
オッコ・カム指揮フィンランド・ラハティ交響楽団のシベリウス交響曲チクルスは、生誕150年を迎えたシベリウスメモリアルイヤーの日本における白眉であり、日本各地から聴衆が集まってきていると思われる。白人の聴衆も多い。

アメリカ式の現代配置による演奏。コンサートミストレスはMaaria LEINO。クラリネット奏者の女性はオレンジ色の髪、ファゴットを吹く女性は赤毛で共に目立つ。染めているのではなく、地毛が明るい色なのであろう。

交響曲第1番。カムは今回の演奏会では全曲椅子に座って指揮した。
冒頭、ティンパニが鳴る中でクラリネットが孤独な感じのソロを奏でる。途中でティンパニが音を止め、クラリネットの一人語りになるのだが、一人語りの場面ではカムは指揮するのを止めて、オレンジ色の髪のクラリネット奏者に全てを任せた。
ラハティ交響楽団は、輝きと仄暗さを併せ持つ弦の音色が出色のオーケストラである。管も弦ほどではないが優れている。

    カムの指揮は基本的には右手と左手がシンメトリーに動く端正なものだが、時折、指揮棒を持つ右手とは別の動きをする左手の操作が抜群。音型を操作し、音色やニュアンスを変える。ゲネラルパウゼを長く取るのも特徴である。
冴え冴えとした優れたシベリウスであった。

交響曲第2番。
この曲は、オスモ・ヴァンスカに率いられたラハティ交響楽団が、西宮北口の兵庫芸術文化センター大ホールで「理想的」といってもいい超名演を行っており、それとの比較にもなる。なお、カムはシベリウスの交響曲第2番を計3度レコーディングしており得意曲目である。
ヴァンスカに比べると個性的な演奏である。カム指揮によるシベリウスの交響曲第2番の実演はこれまでにも東京と京都で一度ずつ聴いているが、それに比べても個性の度は強い。細部まで丁寧に仕上げた演奏であるが、第2楽章は勿論、第4楽章でもシベリウスの苦悩がヴィヴィッドに伝わってくる。第4楽章もカムは単純な凱歌にすることはなかった。

アンコールは3曲。3回に分けられて行われたカムとラハティの「シベリウス交響曲サイクル」であるが3回ともアンコールは3曲であった。

「ミランダ」(組曲「テンペスト」第2判より)、「行列」、「間奏曲」(「ペレアスとメリザンド」より)の3曲が演奏されたが、いずれも生命力に満ちた快活な音楽が奏でられた。

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